自動車産業を包囲する悪夢 「米中対立」「ウクライナ侵攻」はバリューチェーン構築にどのような影響を与えるのか

キーワード :
, , ,
中国と東アジアの「グローバル・バリューチェーン」の発展について解説。中国以外の東アジア諸国がこれまで、高付加価値の部品・付属品を生産し、輸出してきた。

雲行きが怪しくなったGVCの将来

猪俣哲史『グローバル・バリューチェーン』(画像:日本経済新聞出版社)
猪俣哲史『グローバル・バリューチェーン』(画像:日本経済新聞出版社)

 本書は2019年に出版されているが、その後の新型コロナウイルスの世界的な流行はGVCにとって大きな試練となった。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻もGVCに大きな影を投げかけている。

 GVCの発展には、

・全体的な輸送コストの低下
・航空輸送の発達によるジャスト・タイム・イン・デリバリーの発達
・通関手続きの簡素化

などが貢献した。

 しかし、エネルギー価格の高騰は輸送コストを引き上げ、ウクライナ侵攻に伴い航空機のロシア上空の通過が難しくなり、中国でのロックダウンはサプライチェーンを寸断している。

 また、米中対立は一部でサプライチェーンの再編を要請しており、GVCの将来に関しては、にわかに雲行きが怪しくなってきたのだ。

 世界の貿易についての将来を見通すことはできないが、未来を考えるためには現在の状況を把握することが必要不可欠となる。本書は、今後の世界貿易の姿と東アジア経済を考えるための足場を与えてくれる本と言えるだろう。

全てのコメントを見る