自動車産業を包囲する悪夢 「米中対立」「ウクライナ侵攻」はバリューチェーン構築にどのような影響を与えるのか

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中国と東アジアの「グローバル・バリューチェーン」の発展について解説。中国以外の東アジア諸国がこれまで、高付加価値の部品・付属品を生産し、輸出してきた。

GVCは今後どこまで拡大していくか

バリューチェーンのイメージ(画像:pixabay)
バリューチェーンのイメージ(画像:pixabay)

 近年、製造業の中の基幹部品を握る企業が「プラットホーム・リーダー」として存在感を発揮することが多い。

 こうした例としては、一時期のパソコンにおけるインテルや携帯電話市場における台湾のメディアテックがあり、携帯電話に関しては4Gが主流となってからは、メディアテックに代わって、アメリカのクアルコムが存在感を高めている。

 このようにGVCの発展と製造業のモジュール化は、今までの先進国の完成品メーカー中心のサプライチェーンを再編しつつあり、自動車産業でもこうしたことが起こる可能性はある。

 特にEVはガソリン車に比べてモジュール化が進んでいるとも言われており、基幹部品を握ったメーカーが、完成車を販売するメーカーよりも存在感を持つようになるケースも考えられるかもしれない。

 アジアを中心に発展してきたGVCだが、さらに賃金の安い他の地域の途上国(例えばアフリカ諸国)を巻き込んでいくかということについては、著者はやや懐疑的な見方を示している。

 アフリカ諸国の労働生産性は低迷したままであり、また、環境問題に対する関心の高まりで、メーカーはより厳格な環境影響評価に基づく生産管理が求められるようになった。そして、何よりも生産のオートメーション化が進んだことで、今後、製造業は今までのような膨大な労働力を必要としなくなる可能性が高いのである。

 今までは、途上国は「安価な労働力」という入場チケットを持ってGVCに加わり、成長とともに「安価な労働力」というチケットをさらに貧しい国に譲り渡していった。しかし、さらなるデジタル化やオートメーションの進展によって、この「安価な労働力」というチケットの有効期限は切れてしまうのかもしれず、GVCの恩恵は

「中国+α」

で、打ち止めになってしまう可能性もある。

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