トヨタ・ホンダを狙う米国資本! テスラ「タイ進出」が示す本当の意味とは
タイ政府もEVに積極的

タイは東南アジア最大の自動車産業国だ。自動車産業の割合は、国内総生産(GDP)の約1割を占める。外資系メーカーがタイに生産拠点を構え、その外資系メーカーがタイの自動車産業を支えている点が大きな特徴だ。
タイは長年、外資系自動車メーカーに依存してきた。マレーシアの国産車「Proton(プロトン)」や「Perodua(プロドゥア)」、ベトナムの国産車「VinFast(ビンファスト)」のように、自動車製造ノウハウを生かして国産車を製造するという流れにはなっていない。
また、タイは世界で第10位の自動車生産国で、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中ではダントツのトップだ。ちなみに、ASEAN諸国で2位のマレーシアは世界第22位である。
テスラがそういった状況のタイへ正式に進出した背景には、タイ政府の積極的な自動車EV化への取り組みとEV市場のポテンシャルの高さが挙げられる。
タイ政府は、2020年3月の国家電気自動車政策委員会で、今後5年以内にタイがASEANのEV生産のハブになることを目標として掲げた。また、2030年までに自動車の総生産台数のうち30%をEV車にすることも目標として掲げている。タイ政府がEV化推進をする背景には、バンコクをはじめとした大都市での大気汚染問題がある。
タイ政府は大気汚染に歯止めをかけるため、粒子状物質(PM)2.5削減や排ガス規制の施策を次々に導入している。タイ首相は、バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済(バイオテクノロジーやバイオマスの活用、再生可能エネルギーの導入、リサイクルの推進などを軸とした循環型のグリーン経済のこと)を国家戦略モデルに据えることを表明しており、国全体で環境問題へ真剣に取り組んでいることが伺われる。
テスラは過去に、人口約14億人のインドにも進出を試みた経緯がある。世界第2位の自動車市場であるインドがテスラに対し、高い輸入関税を回避するために、自国にテスラの自動車工場を建設することを働きかけたのだ。しかし、両者は合意に至らず、テスラはインド市場参入計画から撤退した。
その点、タイはEV化推進に積極的な国のひとつで、EVメーカーに対する法人税の免除や補助金の交付、物品税率・輸入関税の引き下げなどの優遇税制措置を東南アジアで最初に実施した国だ。テスラにとってもEV車を販売しやすい環境が整っていると言える。タイ政府は以前から自動車産業に力を入れており、今後はEV化へ積極的にシフトしていくという方針も、信頼できる。テスラのタイへの進出は、タイ国内のEV化推進政策の追い風に乗って、好調なスタートを切ることであろう。