トヨタ・ホンダを狙う米国資本! テスラ「タイ進出」が示す本当の意味とは

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テスラがタイで正式に事業者登録をし、タイ法人「テスラ・タイランド」を設立。同社の東南アジア市場参入の足がかりになると注目を集めている。

タイ市場には競合も テスラにどう対抗するのか

テスラ世界に35000のチャージャー設置(画像:Tesla)
テスラ世界に35000のチャージャー設置(画像:Tesla)

 そんなテスラのタイ市場進出だが、もちろん不安要素もある。

 実はあまり知られていないが、タイには「アジアのテスラ」と言われるタイ初の国産EVメーカーが存在する。それが、新興企業「エナジーアブソルート(EA)」だ。同社がタイのテスラと言われるのは、EVに関するすべての事業を総合的に手がけている点がテスラに共通しているからだ。

 同社は、バイオディーゼル工場や太陽光発電、風力発電などグリーンエネルギー分野で急成長した。同社の最高経営責任者(CEO)のソムポート氏は、元証券会社の社長で、株でもうけた資金で2006年に起業。タイのイーロン・マスクと言われている。

 タイでは長い間、国産自動車メーカーが不在であったが、エナジーアブソルートが2019年に初の国産EV車「Mine Mobility」を販売し、国産自動車メーカーの誕生とEV市場への参入を同時に果たした結果となった。知名度やブランド力では圧倒的に不利な同社は、タイの自動車販売台数の大部分を占める日本車メーカーや海外メーカーと同じ土俵で戦うことを避け、ターゲットを一般消費者ではなく、参入の余地があるタクシー業界など商用車へと絞った。

 テスラのライバルとして、エナジーアブソルートは企業規模でも資金力でも足元にも及ばない。しかし、タイEV市場でのテスラ参入を受け、エナジーアブソルートのEVライフサイクル関連事業の今後の展開にも注目が集まる。

EVのシェア争いは一層加速

 タイの自動車販売で圧倒的なシェアを誇るのは、トヨタやホンダなどの日系ブランドだ。しかし、最近では中国系メーカーも少しずつシェアを広げている。

 タイで販売予約台数5位のMG(上海汽車)は、2021年にタイで新規登録されたバッテリー電気自動車(BEV)の半数を占めている。長城汽車のEVブランドであるHAVAL/ORAも少しずつ販売台数を伸ばしており、中国勢の勢いが増してきている。

 MGは2022年には3ブランドの新型EVモデルをタイに投入する予定で、ライバルであるタイトヨタ自動車もBEVの新モデルを投入すると発表している。

 テスラの参入は、日系メーカー、中国メーカーのEVシェア争いに一層の拍車をかけることが見込まれ、今後数年のタイのEV市場が加熱することが予想される。世界最大の電気自動車メーカーであるテスラに、各社がどう対抗していくのかにも注目だ。