深刻なウクライナ穀物の輸出停止! 代替輸送の本命は「ドナウ河」かもしれない
4000万tに膨らむ穀物在庫

ロシア・ウクライナ紛争で、「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれるウクライナの穀物輸出が大幅に停滞。これが昨今の食料価格の高騰や、アフリカ途上国での大飢饉(ききん)の危険性を生み出している。もちろんウクライナにとって、穀物は輸出産品の主力で外貨獲得の稼ぎ頭だ。それだけに国家財政への影響も計り知れない。これを回避しようと、ウクライナは西側諸国の協力のもと、代替輸送ルートの構築に知恵を絞っている。
同国の小麦生産量は約2800万t(2019年)で世界7位、うち約1300万t(同)が輸出向けでこちらは世界5位、世界シェア7%を誇る。トウモロコシは約3600万t(世界5位)で、うち約2400万t(同4位)が輸出用で世界シェアは13%に達する。大豆や大麦、ヒマワリの種(植物油)の生産量も世界有数だ。
ウクライナ穀物協会(UGA)によれば、現在滞留する穀物量は約2500万tだが、夏に収穫期を迎える冬小麦を筆頭に、2022年秋には新たに3000万tの穀物が生産されるため、国内消費分を除いても、このままでは在庫量は4500万tに膨れ上がると推測する。
一方、ウクライナの穀物輸出の95%は外航用の大型バラ積み船(バルク・キャリア/バルカー)による海運が担っている。積載重量トン(DWT。船舶の積載能力にほぼ等しい。ここでは「トン」と表記)1万トン以上、なかには10万トンDWT級の超巨大船も用立てて、黒海沿岸のオデーサ、マリウポリなどの貿易港から出荷される。だが紛争勃発で、海上輸送は現在ほぼ100%ストップし、同国の穀物輸出量は紛争前までの600万t/月から、6分の1の100万t/月へと激減している。
そこで代替ルートとして、
鉄道貨物:隣国ポーランドから北海の港湾に輸送
河船:ドナウ河を使いルーマニアへ輸送
のふたつが実行中で、さらに一部報道では2022年5月下旬にドイツで開催予定の先進7か国(G7)サミットで、ウクライナ西端からルーマニアの鉄道を使って、黒海のコンスタンツァ港に向かう「第2の鉄道貨物ルート」を提唱するという。
今後、穀物輸送のための海上封鎖解除の交渉がウクライナとロシアとの間で行われる可能性が高いが、交渉の際の駆け引きの「手札」は多いに越したことはない。ただ経済的に考えれば、やはり輸送力と運搬コストで圧倒的に優位な河船が、代替ルートの主軸になるはずである。