深刻なウクライナ穀物の輸出停止! 代替輸送の本命は「ドナウ河」かもしれない

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ロシア・ウクライナ紛争で、「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれるウクライナの穀物輸出が大幅に停滞し、国家財政への影響も計り知れない状態となっている。

1万8000トンの輸送力誇る6連結艀

コンスタンツァ(画像:(C)Google)
コンスタンツァ(画像:(C)Google)

 さてその河船ルートはウクライナ本土の南端、ルーマニアとの国境を流れる大河・ドナウ(ダニューブ)河を活用するもので、まず国内の穀物をドナウ河畔の河港に集積し、艀(はしけ〈バージ〉。水深の浅い河川でも航行可能な平底船)に積み込み、河づたいにルーマニアの一大貿易港・コンスタンツァまで運び、ここで大型バラ積み船に載せ替えるという“裏ワザ”である。

 この河はヨーロッパの物流網の根幹で、「国際河川」(原則的にどの外国船でも自由に航行可能な河川)としても有名であり、水路として十分に整備されている。ウクライナは黒海河口~モルドバ国境の約150km(川幅は200~1000m)にわたってドナウ河に面し、ここには上流からジュルジュレシュティ、レニ、イズマイール、キリア、ヴィルコヴェなどの河港都市が存在する。比較的大きなドック(埠頭)やクレーン、穀物用サイロ、倉庫など港湾設備を持ち道路はもちろん大半が鉄道とも直結する。中でもレニ、イズマイールが中核である。

 ウクライナ産穀物の一大集積地で同国最大の貿易港のオデーサ(港湾は休止中)と、レニ、イズマイールとの間は200~300kmで、鉄道貨物やトラック(トレーラー)によるピストン輸送がすでに始まっている。また今は「バラ積み」が主だが、今後は国際標準化機構(ISO)規格の20ft(フィート。1TEU)/40ft(2TEU)の両コンテナの利用に移行した方が効率的だろう。積み替えや荷物の取り回しが楽でコンテナ自体が倉庫を兼ね、短期間なら野外に放置できる。サイロ(タンク状の穀物用倉庫)や倉庫が不足する現状では重宝するだろう。小麦なら20ftコンテナで約24t、40ftコンテナで約48t積める。

 河を往来する船は艀が主力だが、本流なら8000トン級の比較的大きなバラ積み船も通れる。ただし支流やショートカットした運河などの航行には、エンジン付き艀で5000トンまで、あるいは「プッシャー・バージ」(押船)と呼ばれるタグボートに似た駆動船で、エンジンのない艀(3000トン)を一度に6隻(2列×3組)押してコンボイを組む方式(計1万8000トン)が限界と決められている。

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