道路交通の排出量ネットゼロ、達成の可能性は「ほんのわずか」 ブルームバーグが調査リポート
政府や業界関係者の「大きな後押し」が必要
ブルームバーグNEFはこのたび、調査リポート「電気自動車の長期見通し(Long-Term Electric Vehicle Outlook: EVO)」を発表した。
それによると、道路交通セクターが2050年までにCO2排出量ネットゼロを達成することは、電気自動車の普及によってまだ可能とはいえ、政策立案者と業界関係者による喫緊の対応が求められる。
またバスや二輪車、三輪車など一部の車両種類については、ネットゼロ目標達成に向けた軌道に乗りつつあるが、その他の種類、特に中型・大型商用車では予断を許さず、追加的な措置が必要だ、としている。
同社の電気自動車チームは、
「2050年までに道路交通セクターが排出量ネットゼロを達成できる可能性は、ほんのわずかしか残されていない。向こう数年間は、各国政府や自動車メーカー、部品サプライヤー、充電インフラ供給会社による大きな後押しが必要だ」
と指摘する。
2022年の電気自動車の長期見通しでは、2050年までの電気自動車の普及に関して二つのシナリオの概要を解説し、蓄電池、材料、石油、電力、インフラの需要とCO2排出量への影響を検証している。
「経済移行シナリオ」は、新たな政策措置や規制を想定せず、主に技術および経済面の動向と市場原理に基づいている。
「ネットゼロ・シナリオ」は、2050年までの排出量ネットゼロを達成するための道路交通セクターの潜在的な道筋を分析しており、駆動技術の導入を左右する決定要因として経済性に着目している。
電気乗用車の販売台数は、2021年の660万台から2025年には2100万台へと今後数年間で急増する見込みだ。同社の経済移行シナリオによると、電気自動車は2025年までに7700万台、2030年までに2億2900万台に達すると予想される。
2021年末時点の1600万台からの増加となり、これまでのエネルギー移行において電気自動車が極めて成功しているという事実が反映されている。
電気自動車の普及が進むにつれ、1日当たり150万バレルもの石油需要がすでに減少しているという。大半はアジアの電気二輪・三輪車によるものだが、今後も電気乗用車の販売台数の増加に伴い、削減可能な石油需要は2025年には1日当たり250万バレルとなるとの見通しを立てる。
同社の調査結果では、乗用車以外にも道路交通のあらゆる分野で電動化が広がることから、道路交通セクター全体の石油需要は2027年までにピークを迎えると想定。内燃機関自動車の販売は2017年にすでにピークを迎えており、2024年に世界の内燃機関乗用車台数が減少に転じると予想している。
2050年までに全世界の自動車をネットゼロにするためには、全世界での乗用車新車販売台数に占めるゼロエミッション車の割合が、2030年までに61%、2035年までに93%となり、かつ2038年までには全ての車両種類で内燃機関自動車の販売を終了させる必要があるという。