新幹線の“見返り”から40年… なぜ埼玉の短距離路線が「満足度2位」へと躍進したのか?
「新幹線の補償路線」は、なぜ人気沿線へ変わったのか――。埼玉・ニューシャトルが住みここちランキング上位に躍進した背景には、沿線開発と黒字転換、そして運賃を巡る議論があった。
値下げ要望と慎重経営の板挟み

一方、安定して利益を確保している同社に対しては、近年、「運賃、とくに通学定期が高い」との声も出ている。自治体が出資する第三セクターである以上、利益が出ているのであれば、沿線住民へ還元すべきだとする意見である。
埼玉県議会では、2018年12月定例会の決議で、「通学定期乗車券運賃の値下げに向けた検討を行うよう、県が埼玉新都市交通株式会社ニューシャトルに対して働き掛けること」を求めていた。2019年6月定例会では、議員からの質問に対し、上田清司知事(当時)が、引き続き会社側へ働きかける考えを示した。一方で、鉄道事業は設備更新や車両交換に備え、多額の資金を積み立てる必要があり、運賃は会社の経営判断との認識も示している。
また、埼玉県の石川英寛企画財政部長(当時)も、鉄道事業は運賃収入などによる経営が基本であり、通学定期値下げのために運賃補助を行うことは望ましくないとの考えを示していた。値下げをめぐる議論は、現在も埼玉県議会などで続いているが、実施には至っていない。こうしたなか、同社は公式サイトで2026年2月16日、
「2026年3月の運賃改定は実施いたしません」
と発表した。多くの鉄道事業者が2026年3月に運賃改定(値上げ)を予定していることから、同社にも問い合わせが相次いだためとしている。ただ、この発表は値下げも行わないという姿勢を示したものとも受け取れる。
経営環境や事業規模が異なるため単純な比較はできないが、第三セクター鉄道では、秋田県の由利高原鉄道が通学定期を大幅に値下げした結果、利用客が増えた事例もある。一方、同社は将来を見据え、当面は慎重な経営を続けるとみられる。