「深夜にタクシーなんて来ません」 80代の「約4割」が免許返納を選ばない街、鹿児島県の自治体が始めたライドシェア実証の結果とは

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「午前0時」で足が途絶える地方の苦境。阿久根市が挑んだライドシェア実験は、8日間で利用17件、実働わずか2時間50分と採算の壁を露呈した。80代の4割超が免許返納を拒む超高齢化の現実。単なるデジタル化ではない、電話文化とデータ活用を融合した「移動の網」の再編は、地方再生の分水嶺となるか。

データ収集で描く次世代の移動網

鹿児島県阿久根市「日本版ライドシェア」(画像:阿久根市)
鹿児島県阿久根市「日本版ライドシェア」(画像:阿久根市)

 阿久根市が掲げる「ICT技術を活用した利便性向上」の文字面を追うと、これからの地域交通が目指すべき方向が見えてくる。市が検討しているのは、バス路線の検索アプリやSNSでの情報発信、さらには乗合タクシーへのAI配車システムの導入といった施策だ。

 興味深いのは、スマホアプリの活用を

「使い方を案内・周知する等により、公共交通の利用を促します」

という範囲に留めていることだろう。2024年前半、国は「配車はアプリ原則」という方針を打ち出したが、阿久根市はあえてそれに追随せず、電話受付を維持する道を選んだ。利用者の中心である高齢層の実態を重く見た、現実的な判断といえる。

 ここでのICTの役割は、表面的な便利さを追求することだけではない。むしろ、運行を通じて得られるデータをどう集め、どう活かしていくかに主眼がある。

 今回の実証実験で得られた実績は、収益の面から見れば確かに厳しい。だが、深夜帯の移動実態を浮き彫りにした意味は大きいのではないか。市内に産業拠点が点在しているにもかかわらず、受付終了間際に電話が鳴らなかったという事実。これは、現在の受付体制が深夜の突発的な需要をうまく拾えていない可能性を示している。

 得られた知見は決して無駄にはならないはずだ。バスやタクシー、そしてライドシェア。これらをどう組み合わせれば、地域全体を支える移動の網をつくり上げられるのか。今回の分析をもとに、次の段階へ進むための地慣らしは、着実に行われている。

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