「深夜にタクシーなんて来ません」 80代の「約4割」が免許返納を選ばない街、鹿児島県の自治体が始めたライドシェア実証の結果とは
「午前0時」で足が途絶える地方の苦境。阿久根市が挑んだライドシェア実験は、8日間で利用17件、実働わずか2時間50分と採算の壁を露呈した。80代の4割超が免許返納を拒む超高齢化の現実。単なるデジタル化ではない、電話文化とデータ活用を融合した「移動の網」の再編は、地方再生の分水嶺となるか。
行政が肩代わりする深夜の供給

阿久根市の産業構造を眺めると、深夜の移動ニーズは決して小さくないことがわかる。市内には食肉加工工場のような製造拠点があり、日本最大級の24時間営業店であるスーパーセンターも稼働している。夜間も動き続けるこうした産業基盤があるにもかかわらず、2024年4月からの労働時間規制がタクシー業界を直撃した。
慢性的な人手不足も重なり、それまで守られてきた24時間の運行体制は午前0時で幕を閉じることとなった。この運行停止が、深夜まで働く現場や飲食店の活動に影を落としているのは言うまでもない。
こうした供給の空白を埋めるべく、2026年1月の金曜日と土曜日、計8日間にわたって行われたのが日本版ライドシェアの実証実験だ。プレスリリースでも報じられた通り、市役所職員が
「副業ドライバー」
を担い、午前0時から1時までの移動手段を守った。これは、市内事業者の担い手不足を解消するために市が掲げる「副業人材の活用」を、自ら体現する試みでもあった。本来なら採算が合わず消えていくはずの深夜運行を、公的な関与によってつなぎとめている形だ。
運行エリアは市内全域だが、拠点は既存の阿久根タクシー本社に置かれた。22時から午前1時までの枠のうち、23時45分まではタクシー車両を優先し、配車が追いつかない場合にのみライドシェア車両を出す。地元の事業者の収益を守りつつ不足分を補完する狙いだろうが、利用者からすれば「タクシーが空くまで出動しない」という仕組みの不透明さは否めない。運賃は法令に基づき、深夜の距離運賃に1.13を乗じた強気の価格に設定された。それ以降の時間帯はライドシェアのみの配車となり、受付は電話のみに絞られた。