「深夜にタクシーなんて来ません」 80代の「約4割」が免許返納を選ばない街、鹿児島県の自治体が始めたライドシェア実証の結果とは
「午前0時」で足が途絶える地方の苦境。阿久根市が挑んだライドシェア実験は、8日間で利用17件、実働わずか2時間50分と採算の壁を露呈した。80代の4割超が免許返納を拒む超高齢化の現実。単なるデジタル化ではない、電話文化とデータ活用を融合した「移動の網」の再編は、地方再生の分水嶺となるか。
返納を阻む移動インフラへの不安

市がライドシェアの可能性を追い続ける背景には、この街が抱える切実な移動の事情がある。2024年にまとめられた「阿久根市地域公共交通計画」をひも解くと、その姿が見えてくる。
60歳代以上の市民が買い物や通院で行う移動の70%以上は自家用車が担っているが、公共交通を使うとなれば、話は別だ。鉄道や路線バスの利用は5%にも満たず、タクシーが圧倒的な主流となっている。日中の時間帯から、タクシーは地域住民の暮らしを支える欠かせない土台なのだ。
驚くべきは、免許を返すつもりのない高齢者の多さだろう。70歳代以上で約58%、80歳代以上に至っても約41%が、免許の返納を予定していない。この数字は、今の移動手段がいつまで続くかわからないという、市民の不安の裏返しではないか。たとえ不便であっても自らハンドルを握り続ける――それが生活を守るための、精一杯の選択になっている現実がある。
阿久根市の人口は、2060年には6623人まで急減する見通しだ。人が3分の1にまで減ってしまう社会。これまでのやり方で交通網を維持するのは、もはや不可能に近い。地域の足をどうつなぎとめるか。移動インフラのあり方そのものを、根本から見つめ直すべき局面に立たされている。