かつては「キューポラの街」――特急ゼロの埼玉60万都市が、賃貸ランキング“4冠独占”したワケ

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埼玉県で賃貸需要が最も集中した街はどこか。答えは人口約61万人の川口市だ。2025年12月~26年2月のPVで全タイプ首位を独占。特急が止まらない駅でありながら、都心25分圏と抑制された家賃が生む“実利優先”の都市構造が、市場の選択を変え始めている。

効率最適都市か機能限界前夜かの分岐点

川口市の現状と課題。
川口市の現状と課題。

 かつて鋳物工場の煙突が並んだ空には、現在、前述のエルザタワー55を含む高層ビル群がそびえる。JRの特急が停車せず、各駅停車の電車が多くの通勤客を運ぶこの街は、外国籍住民が全国最多となるなど、日本の将来を先取りした場所となった。賃貸市場での圧倒的な支持が、その実態を裏付けている。

 現代の居住者が都市の格式よりも、都心への時間効率と住居費のバランスを重視している。そごうの閉店から「ららテラス」開業への流れは、消費の形態が華やかさから実利へと移り変わった証左だ。川口市は過密や摩擦という課題を抱えながらも、市場原理に即した姿へと変化を遂げた。

 人口が膨張を続ける街は、効率を極めた居住地の完成形なのか。あるいは限界に近い負荷を抱えた機能不全への入り口なのか。2026年現在の川口は、その両面を抱えたまま進んでいる。街の価値をどう捉えるかは、行政の統計以上に、日々住む場所を検索し選び取るひとりひとりの判断に委ねられている。

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