かつては「キューポラの街」――特急ゼロの埼玉60万都市が、賃貸ランキング“4冠独占”したワケ
埼玉県で賃貸需要が最も集中した街はどこか。答えは人口約61万人の川口市だ。2025年12月~26年2月のPVで全タイプ首位を独占。特急が止まらない駅でありながら、都心25分圏と抑制された家賃が生む“実利優先”の都市構造が、市場の選択を変え始めている。
インフラ逼迫と人口構成変化の同時進行

川口市の現状を分析すると、インフラの限界と財政の圧迫が浮き彫りになる。前述の通り1日平均乗降人員は約16万人に達するが、快速や特急は停車しない。大量の通勤客を各駅停車のみで輸送する現状は、移動効率を制約する要因となっている。財政面では2023年度の財政力指数が0.93、経常収支比率が98.5%で、埼玉県内では18位にとどまる。生活を支える維持費が税収を圧迫しており、行政運営の余力は乏しい。
市場動向をみると、人口構成の急激な変化が鮮明だ。2025年1月1日時点の内訳は、日本人が前年比3901人減少した一方、外国人は5033人増加して4万8161人に達した(『産経新聞』2025年2月14日付け)。外国人率は7.9%へ上昇し、新宿、江戸川両区を除けば全国の市町村で最多となる。こうした増加は治安への懸念を招く一方で、賃貸市場には活気をもたらしており、建築制限が緩い準工業地域などの中高層物件が多様な需要を吸収している。
一方で高密度な居住は社会摩擦も引き起こしている。2023年7月には、川口市立医療センター付近でトルコ国籍の男女約100人が集まる騒動が発生し、救急受け入れ業務が約5時間半にわたって停止した。2023年の救急出場件数は前年比7.5%増の3万5964件に上り、現場到着の遅れも生じている。
2024年の犯罪率は人口1000人に対し7.6件で県内13位だが、外国人人口が2005年比で約3倍に急増するなか、住民の不信感は根強い。インフラへの過度な負荷とコミュニティーの摩擦が、都市価値を維持できるかどうかの岐路となっている。