かつては「キューポラの街」――特急ゼロの埼玉60万都市が、賃貸ランキング“4冠独占”したワケ
埼玉県で賃貸需要が最も集中した街はどこか。答えは人口約61万人の川口市だ。2025年12月~26年2月のPVで全タイプ首位を独占。特急が止まらない駅でありながら、都心25分圏と抑制された家賃が生む“実利優先”の都市構造が、市場の選択を変え始めている。
鋳物の街から高密度住宅都市への転換

川口市は人口約61万人を擁する埼玉県第2の都市で、外国人が10年間で約1.8倍に増えている。政令指定都市・特別区を除けば千葉県船橋市に次ぐ全国2位の規模を誇る。面積は61.95平方キロメートルで、人口密度は中核市のなかで大阪府の豊中市、吹田市に次いで全国3位。居住の集中により、都市機能が限られた範囲に集約されている。
江戸時代から鋳物工業が盛んな産業拠点として発展し、1910(明治43)年の川口町駅開業後は
「東の川口、西の桑名」
と称された。だが1970年代以降、工場の移転にともない広大な跡地はマンションへと転換。1998(平成10)年竣工のエルザタワー55(高さ185.8m)は当時日本一の超高層マンションとなり、垂直方向へ伸びる現在の都市構造を象徴する存在となった。駅周辺は建築制限が比較的緩く、20棟超の高層マンションが林立している。
交通網はJR京浜東北線、JR武蔵野線、埼玉高速鉄道線の3軸が支える。2001年の埼玉高速鉄道線開業により、旧鳩ヶ谷市などの鉄道空白地帯が解消された。JR川口駅は「特急が停車しない駅」として日本最多の人口を抱え、1日平均約16万人が利用する。高頻度で運行する鉄道網が、居住に特化した街の機動力を担保している。水平に広がっていた工場群が垂直の住宅へと入れ替わり、高密度なインフラと組み合わさったことで現在の都市構造が確立した。