燃料サーチャージ「形骸化」の正体――157円で崩れる採算構造【短期連載】1リットルの重み(1)

キーワード :
, ,
原油高が直撃するトラック業界で、燃料費を運賃に転嫁できる企業は23.2%にとどまる。収支率100.7%の薄利構造のもと、燃料が150円/Lで赤字に転落する例も出ており、従来の運賃見直しだけでは追いつかない現実が浮き彫りになっている。制度対応の遅れが経営を圧迫している。

原油高が直撃する輸送現場

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

「物流は経済の血流である」という言葉は、これまでになく重みをもって受け止められている。2026年のいま、直面しているのは人手不足にとどまらない。より避けにくく、企業ごとの努力では対応しきれない燃料費の上昇、すなわち軽油価格の高騰である。給油機に表示される数字は、運送会社の収支の問題にとどまらない。荷主企業の供給網に影響を及ぼし、やがては消費者が手にする牛乳一パックの価格にも広がっていく。トラックのタンクに入る燃料の一滴一滴が、日本の産業の力を押し下げている現実がある。この状況にどこまで目が向けられているだろうか。本短期連載「1リットルの重み」では、この燃料価格の上昇という課題をさまざまな視点から捉え直す。

※ ※ ※

 中東情勢の緊張を背景に原油価格が上がり、公共交通やトラック業界にも大きな影響が広がっている。ただし、燃料サーチャージを導入している会社では、燃料費の上昇分を運賃に反映できる仕組みがあり、燃料高による影響をある程度抑えている。

 燃料サーチャージといえば航空運賃を思い浮かべがちだが、トラック業界にとっても関係のある制度である。2026年3月27日には、国土交通大臣、中小企業庁長官、公正取引委員会委員長が連名で、荷主企業などに対し燃料サーチャージの導入を求めた。

 国があえて要請に踏み切った事実は、原油価格の上昇によってトラック業界の経営環境が厳しさを増している状況を示している。

制度引き上げ後も進まぬ導入

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 トラック業界では、2008(平成20)年3月に国土交通省が「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」をまとめ、2023年3月には通達による扱いから告示へと引き上げられた経緯がある。それにもかかわらず、この制度は航空業界ほど広がっていない。

 東京都トラック運送事業協同組合連合会の「第43回運賃動向に関するアンケート調査結果」(東ト協アンケート)によると、燃料サーチャージ制を「導入している」は23.2%にとどまり、「導入したことがない」が56.0%と半数を超える。導入していない理由としては、

「導入に時間と手間がかかる」
「基本運賃を引き上げてもらっている」

といった回答が目立つ。一方、現在の収受運賃と標準的な運賃を比べた設問では、「極めて低い」「低い」「少し低い」の合計が71.6%に達している。

 燃料サーチャージ制を使わず、基本運賃の引き上げで対応しているものの、運賃への反映は十分とはいえない状況にある。

全てのコメントを見る