「車がないと暮らせません」 地方移住は本当に幸せなのか? 相談件数7.3万件で過去最多、多くが見落とす“生活を左右する基盤”とは
地方移住の相談件数は7万3003件と5年連続で最多を更新したが、現実は甘くない。移住者の35.8%が「交通の不便」を最大の課題に挙げるように、地方の生活は自動車という私有資産に依存する構造で成り立つ。移動負担が社会から個人へ転嫁されるなか、そのコストと労力を引き受けられるかが、移住の成否を分ける。
地方移住と移動の課題

地方移住は、理想か、それとも試練か。都市部を離れ、自然豊かな地域で暮らす選択は、現実的なライフスタイルとして定着しつつある。だが、その裏側には見過ごされがちな課題が潜む。移住をめぐる議論を賛否の対立として片付けるべきではない。それぞれの前提条件に横たわる、移動という仕組みの差異から実態を読み解く必要がある。
住む場所を変えることは、移動のあり方を全面的に入れ替える行為に等しい。都市部では、高い住居費を支払う対価として、鉄道をはじめとする公共インフラを享受する権利を得ている。対して地方では、住居費は抑制されるものの、自家用車という個人資産を自力で維持し、運用する責任が生じる。移動にともなう負担のすべてが、社会から個人へと転換されるのだ。
移動という生存に欠かせない活動を、外部に頼らず自分たちで支え続けなければならない。その重圧が、生活の質を確実に変質させていくのである。