「車がないと暮らせません」 地方移住は本当に幸せなのか? 相談件数7.3万件で過去最多、多くが見落とす“生活を左右する基盤”とは
移住ニーズの拡大と交通課題

地方移住への関心は確実に高まっている。ふるさと回帰支援センター(東京都千代田区)に寄せられた2025年の移住相談件数は7万3003件に達した。前年から18.3%増加し、5年連続で過去最多を更新している。コロナ禍を経たテレワークの普及に加え、都市部の住宅価格高騰や猛暑といった環境要因が、移住志向を後押しした形だ。
相談件数が2020年比で約1.5倍にまで膨らんだ事実は重い。都市が提供する利便性よりも、過密にともなうコストを嫌い、移動によって生活の質を改善しようとする層が増えた証拠だろう。地方移住はもはや特別な決断ではなく、より良い人生を模索する現実的な手段として定着したのだ。
しかし、この理想は生活インフラ、とりわけ移動手段の制約という現実と隣り合わせにある。都市の不利益から逃れる代わりに、移動にともなうすべての負荷を自身で引き受ける覚悟が、成否をわけるのではないか。
AlbaLink(東京都江東区)が移住経験者458人を対象に実施した調査(2026年3月13日発表)では、田舎暮らしの困難として
「交通の便の悪さ」
が35.8%で首位を占めた。次いで「人間関係の煩わしさ」が29.7%、「商業施設の少なさ」が21.2%と続く。交通への不満は切実だ。「交通の便が悪く、車が必須になった」とする20代男性や、
「とにかく交通が不便。バスは1日数本で、タクシーも遠くてなかなか来ない。電車は残業すると30分以上待ちは当たり前。車を運転できる人しか住めない」
と吐露する30代女性の声が、その深刻さを物語っている。
不満の本質は、移動にともなう非生産的な労働時間の増大にあるのではないか。都市部において移動の主体は公共インフラ側にあるが、地方では個人が自らハンドルを握り、車両管理や雪かきといった付随作業まで担わなければならない。35.8%という数値は、本来の生活時間が移動の維持に奪われ始めたことへの拒絶反応とも読み取れる。
「自家用車がある前提で街が作られている」
という指摘通り(トゥギャッター「「地方暮らしは車がないと生活できないは9割甘え・自転車があればなんとかなる」の意見に対して自転車ではダメなこれだけの理由」より)、地方の生活は個人の私有資本を絶えず投入し続けなければ成立しない構造になっている。