「車がないと暮らせません」 地方移住は本当に幸せなのか? 相談件数7.3万件で過去最多、多くが見落とす“生活を左右する基盤”とは
地方移住の相談件数は7万3003件と5年連続で最多を更新したが、現実は甘くない。移住者の35.8%が「交通の不便」を最大の課題に挙げるように、地方の生活は自動車という私有資産に依存する構造で成り立つ。移動負担が社会から個人へ転嫁されるなか、そのコストと労力を引き受けられるかが、移住の成否を分ける。
理想と現実の間にあるもの

地方移住は現地のインフラ状況や経済条件、さらには技術水準といった前提の上に成り立つ、ひとつの主体的な選択である。
都市では公共交通が生活を支え、地方では自家用車が社会を支える。どちらの仕組みが優れているかという議論は、さして重要ではない。自身がどのような条件の下で生きていきたいのかを、見極める視点が不可欠となる。
移住の準備として、31.9%の人が
「念入りな情報収集」
を挙げていた事実は重い。この情報の核心は、その土地で移動を維持するために、どれほどの費用と時間、そして労力を自ら負担し続けられるかという一点に集約されるだろう。
移住とは、単に住む場所を移す行為ではない。移動という目に見えない生活基盤を、自らの力で運用し続ける決断を下すことだ。この構造を正確に捉えたとき、理想の暮らしは初めて、地に足の着いた現実的な選択肢として浮かび上がるのではないだろうか。