成田空港用地「強制収用」を検討! 「流血の記憶」か、「アジアの競争力」か? 89.7%で止まる拡張計画、その先にある判断とは

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成田空港は発着50万回体制を目前に、用地確保89.7%という壁に直面する。残るわずか10.3%が全体を止め、全面供用は1年以上遅れる見通しだ。強制取得か対話継続か――過去511件の対立の記憶を背に、日本の国際競争力を左右する判断が迫られている。

未取得地の重み

成田空港拡張の課題と現状。
成田空港拡張の課題と現状。

 2019年8月末時点のデータによれば、空港用地内でいまだ取得できていない土地は、合計でわずか2.9haにすぎない。その内訳を詳しく見ると、敷地内に住む地権者の土地が2件で1.7ha、敷地外に住む人の分が4件で0.6ha。さらに一般の共有地が3件で0.5ha、いわゆる一坪共有地が2件で0.1haとなっている。

 これほど限られた面積が、日本の航空基盤そのものの受け入れ能力を左右しているという現実は、あまりに重い。利用者の利便性や国際的な競争力を重視する立場からすれば、一刻も早く収用手続きに踏み切るべきだ、という結論に至るだろう。

 一方で、先祖代々の土地を守り抜こうとする地権者の側に立てば、国家による強硬な手段は到底受け入れられるものではない。10.3%という未取得の壁を取り除くために生じる社会的な摩擦と、それを避けることで引き起こされる国際競争力の低下。このどちらを重く見るかは、その人の立つ位置によって見え方がまるで異なる。

 今回の決断が、かつてのような激しい対立を再び呼び起こすのか。それとも、今の時代に即した新たな解決の形を見せることができるのか。もし自分がNAAの経営を担う当事者であったなら、1年以上の遅れを呑んででも対話を続ける道を選ぶか、それとも膨らむ航空需要に応えるために収用法の活用に踏み切るのか――突きつけられているのは、極めて重い問いである。

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