欧州車「ハイオク指定」の不都合な真実――なぜ「本国の大衆車」は日本で高級燃料を求めるのか?

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日本のガソリンはJISでRON89以上のレギュラー、96以上のハイオクに区分され、欧州のRON95/98体系との差が輸入車の燃料選択と維持コストを左右する。価格差は約10.8円/L、年間1万km走行で約9000円の負担が生じる一方、欧州車は24万台規模で市場に定着している。

オクタン価が決める燃焼安定性と制御余力

レギュラーガソリンにおける全国平均価格の推移グラフ(画像:資源エネルギー庁)
レギュラーガソリンにおける全国平均価格の推移グラフ(画像:資源エネルギー庁)

 オクタン価とは、エンジン内部で異常燃焼が起きにくい度合いを示す数値である。数値が高いほど、燃料が意図しないタイミングで燃え出しにくく、ノッキングへの耐性が強いとされる。ノッキングとは、燃焼室のなかで混合気が想定より早く着火してしまう現象で、金属音をともない、ピストンやシリンダーに負担を与えることもある。そのため圧縮比の高いエンジンほど、高オクタン価の燃料が求められる構造になっている。

 現代のガソリンエンジンには、ノックセンサーが備わるものが多い。このセンサーが異常燃焼の兆しを捉えると、点火時期を遅らせる制御が働き、エンジンを保護する仕組みになっている。このため、ハイオク指定の車にレギュラーを入れても、直ちに故障するわけではない。ただし点火が遅れることで燃焼効率は下がり、出力や燃費が本来の水準に届かなくなる可能性がある。

 欧州向けのエンジンは、RON95を前提とした燃料環境のなかで圧縮比や点火時期が決められている。日本ではレギュラーが89以上(実際はおおむね90前後)であるため、そのままレギュラー対応に振り切ると耐性に余裕がなくなり、保護制御が頻繁に働く場面が出やすい。結果として、本来の性能が発揮されにくくなる。

 見落とせないのは、車両に投じた費用と得られる価値のずれである。ハイオク指定の車にレギュラーを入れる行為は、数百万円から一千万円規模の車が持つ性能を十分に使い切らない状態に近い。点火時期を遅らせる制御はエンジンを守る一方で、燃焼の効率を落とす側面もある。高い出力を持つ機械を抑えた状態で使い続けることになり、結果として購入に対して得られる実感は小さくなる。

 こうした事情から、日本仕様ではハイオクが指定されることが多い。欧州ではレギュラーで動く大衆車であっても、日本ではハイオクを求める例が少なくないのだ。

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