「ここまで差がつくのか……」 中古査定で「マニュアル車」の扱いが180度変わってしまったワケ――需要と市場構造が生んだ評価の分かれ目とは
AT比率が98%超に達した日本では、免許の約68%もAT限定となり、中古車市場でもATが主流だ。一方、MTは希少性や用途により評価がわかれ、実用車と趣味車で価格差が拡大。流通構造と需要の違いが査定額を左右している。
体験価値による価格形成

スポーツカーの分野では、今でもMT車が高く評価されている。走りを楽しむ層には、エンジンの回転を自ら調整し、シフト操作そのものを味わいたいという意識が根強く、国内外の愛好者や収集家の需要を背景に、MT仕様の価値が高まっている。
マツダRX-7(FD3S型)スピリットRの5速MT仕様では、買取の最高額が約700万円台の中古車も見られる。一方で同じRX-7でもAT仕様は価格が抑えられる傾向にあり、MTとATの間で数百万円規模の差が生じた事例もある。マツダ・ロードスターやトヨタ・GR86のように、操る楽しさを前面に出した車種では、査定の場でもMT仕様に人気が集まり、中古価格も高くなる傾向がある。
こうした価格の上昇を支えているのは、移動の手段としての価値ではなく、代えのきかない体験を得るための価値である。趣味性の高いモデルでは、MTは他の方法で補うことができない機能として受け止められており、価格が上がっても需要が大きく減りにくい性質を持つ。
さらに、北米など海外市場での日本車人気も価格を押し上げている。海外の業者が日本の希少なMT車を買い付ける動きが強まり、国内の需給の枠を越えた価値がついている。査定額は、その車が国の外にまでどれだけ強く求められているかによって左右される。