「光らせないのが格好いい」 750万円のクラウンでも採用、磨くと台無し「マット塗装」が量産車に広がるワケ

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マットカラーの採用が拡大し、特殊塗装市場は2024年の約18億5380万ドルから2033年には29億3807万ドルへ成長見込み。維持管理の負担を抑える技術進歩と高付加価値戦略が、メーカーの収益構造を変えつつある。

マットカラーの魅力と市場動向

マットカラーを施したクラウンクロスオーバー特別仕様車「THE LIMITED-MATTE METAL」(画像:トヨタ自動車)
マットカラーを施したクラウンクロスオーバー特別仕様車「THE LIMITED-MATTE METAL」(画像:トヨタ自動車)

 街なかで見かける車のボディカラーといえば、鏡のように光を反射する艶やかな塗装が一般的だ。ところが近年、光沢を排除した「マットカラー」と呼ばれる艶消し塗装を施した車の存在感が増している。塗装面にあえて微細な凹凸をつけ、光を拡散させることで落ち着いた質感を生み出す仕上げである。通常の塗装が光を跳ね返すのに対し、マット塗装は光を拡散反射させ、鏡面反射を抑える。その結果、車体の形状やプレスラインがくっきり浮かび上がる。

 この特性は、スポーツタイプ多目的車(SUV)のような大柄なボディとの相性が特に良い。余計な反射が消えることで塊感と迫力が際立ち、黒やグレー系のマット塗装は重厚感と高級感を同時に演出する。外観上のこうした差別化は、車種が乱立して同質化する市場で、他車との差別化を明確にし、製品の付加価値を高める手段となっている。

 市場調査会社Consegic Business Intelligenceのレポートによると、世界の自動車用塗料市場は2024年の約94億7600万ドル規模から、2032年には約130億1400万ドル(2兆500億円)に拡大する見通しだ。そのなかでマット仕上げは、予測期間中に最も高い年平均成長率を記録すると予測され、市場全体の年平均成長率4.3%を上回る勢いで伸びると見込まれている。

 背景には、消費者が性能数値以外の感性的な要素に対して、より高い対価を払うようになった市場の変化がある。メーカーもこれに応じ、

・高単価オプション
・特別仕様車

を強化し、一台あたりの収益性を高める戦略を鮮明にしている。一部の愛好家向けだった「マットカラー」は、もはや市場の一角にとどまらず、普及の兆しを見せつつある。本稿では、その背景と今後の展望を考察する。

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