「光らせないのが格好いい」 750万円のクラウンでも採用、磨くと台無し「マット塗装」が量産車に広がるワケ

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マットカラーの採用が拡大し、特殊塗装市場は2024年の約18億5380万ドルから2033年には29億3807万ドルへ成長見込み。維持管理の負担を抑える技術進歩と高付加価値戦略が、メーカーの収益構造を変えつつある。

コーティング技術と普及の可能性

BASFのEMEA地域のキーカラー HARBINGER’S INK(ハービンジャーズ インク)(画像:BASFジャパン)
BASFのEMEA地域のキーカラー HARBINGER’S INK(ハービンジャーズ インク)(画像:BASFジャパン)

 日本メーカーはこれまでマットカラーに慎重だったが、トヨタがクラウンで実用化した「TMコート」は、その制約を緩める可能性を示している。クラウンのマット塗装開発に携わった竹谷美雪氏は、この技術を

「フッ素加工のフライパン」

に例える(Car Watch「トヨタ、クラウン専門店限定の特別な「クラウンクロスオーバー」 手入れしやすいマットなボディカラーを採用」より)。

 塗装の最表面に汚れを防ぎ、付着した汚れを落としやすくする層を設けることで、マット塗装特有の欠点を大幅に軽減した。

 この技術は、年1回程度のメンテナンスで性能を新車に近い状態に戻すことができ、限られた回数であれば機械式洗車機の利用も認められている。ユーザーにとって維持管理の負担、すなわち総所有コストが低下したことは、普及を後押しする要因となる。また、定期的なメンテナンス作業が発生することで、顧客を継続的に店舗に呼び戻す効果も生まれる。これは、車両販売時に利益が確定する売り切り型のモデルから、保守点検を含めて長期的に利益を積み上げる収益構造への移行を促す要素となる。

 世界的な潮流を見ると、電気自動車(EV)の普及にともない、車両を自分好みに仕上げる需要が高まっている。BASFジャパンの2024~2025年予測では、従来の定番色から離れた個性的な色が支持され、ボディカラーの多様化が鮮明になっている。日本の自動車用塗料・コーティング市場も、IMARCグループの報告によれば、2024年の18億5380万ドルから2033年には29億3807万ドル(約4620億円)へ拡大する見通しだ。

 こうした成長は、特殊塗装に対応する専用の洗浄剤や保護剤など、新たな市場の広がりを裏付けている。かつて扱いが難しい仕上げとされていたマットカラーも、保護技術の進歩で量産車の現実的な選択肢となった。普及の拡大は、塗料メーカーや洗車関連産業を巻き込み、自動車を美しく保つ分野に新たな収益機会をもたらしている。

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