自動車市場のポテンシャル――成長余地と人口優位【短期連載】インドは自動車産業にとって桃源郷となり得るのか(1)

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インドは2026年に名目GDPで日本を抜き、2030年には世界第3位に浮上する見込みだ。14億超の人口と安定した労働力を背景に、自動車販売は2025年に550万台へ達し、中国、米国に次ぐ世界第3位の市場となる。

工業化の遅れと資源制約

インド(画像:Pexels)
インド(画像:Pexels)

 インドは世界第4位の名目GDPを持ち、世界一の人口を抱えており、人口構成からくる成長の余地もある。だがさらなる成長には課題もある。

 工業化の進み方の遅れだ。日本貿易振興機構(JETRO)の2024年データによる総貿易額を見ると、差は明確だ。日本の輸出は7090億ドル、輸入は7460億ドルである。中国は輸出が3兆5803億ドル、輸入が2兆5872億ドルに達する。一方、インドは輸出が4428億ドル、輸入が7171億ドルにとどまる。

 日本は輸入と輸出がほぼ均衡しており、中国は輸出が大きく上回る。一方、インドは輸出額が圧倒的に少ない。名目GDPは世界第4位だが、輸出額は規模に見合っていないことがわかる。

 この背景には産業構造の違いがある。インドは

・第1次産業:19%
・第2次産業:28.5%
・第3次産業:52.5%

で(2022年)、中国の第2次産業39.9%と比べると工業化が進んでいない。逆にいえば成長の余地は十分にある。

 資源の制約も大きい。原油や石炭を輸入に頼っており、工業化が進んでいないため慢性的に輸入超過となっている。この状況がルピーの価値を抑えている。ただし自国通貨の安さは生産コストの低減や価格競争力では有利に働くため、どこまで外国資本を呼び込み工業化を進められるかが重要になる。

 外交戦略も課題だ。インドは特定国に依存しない「戦略的自律」を掲げ、ロシアとも西側諸国とも関係を維持してきた。ロシアから安価に原油を輸入してきたものの、これが米国による報復関税の一因となった側面もある。

 ロシアへの制裁を支持する西側諸国からの圧力も強まっており、戦略的自律を維持したまま工業化や輸出の拡大が可能かが問われている。

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