率直に言う テスラ「高級EV撤退 = 敗北」という考えは間違いだ――61%減益の渦中で下した“スペック競争”との決別
EV業界の今後

政策や制度の側面から見ると、EVへの補助のあり方は見直しが求められる。完成車そのものに一律で付ける形から、ソフトウェアや自動化技術の水準を踏まえた評価へ重心を移す必要があるだろう。
トランプ米政権は自動運転車による事故の報告義務を緩めるとともに、州ごとに分かれてきた規制をまとめる法案の成立を目指している。実証に関する規則がそろえば、地域差が壁になる状況は和らぎ、技術の実装は進みやすくなる。
EVを脱炭素政策の到達点として扱うのではなく、産業全体のデジタルトランスフォーメーションを前に進める枠組みの一部として捉え直す発想が欠かせない。車両の型式指定制度についても、更新を前提としたソフトウェアの変化に対応できる仕組みへ改め、認可の流れそのものを効率化していくことが求められる。
産業の側では、車両メーカーがソフトやデータ、AIを専門とする企業とどう役割を分けるかが問われる局面に入った。米エヌビディアは自動運転車の開発を進めやすくする公開型の基盤を打ち出し、中国ではファーウェイが車づくりの主導権を握り始めている。ハードウェアの競争から、知能の競争へ軸足が移っている状況が、こうした動きに表れている。
高級EVは、ブランドを保つ象徴として限定的に扱われ、一部の需要を満たす役割にとどまる見通しだ。今後は電池や制御用の基本ソフト、自動化技術が主戦場となり、投資もそこへ集まる。既存メーカーが物理的な基盤を担い、テスラやAI企業が知能を供給する。PCやスマートフォンで見られたような水平分業が、車の分野でも進んでいく。
消費者の側にも視点の転換が求められる。EVを所有するモノとしてではなく、生活のなかで使うサービス端末として評価する姿勢が重要になる。価格や内装といった見た目よりも、更新のしやすさやソフトウェアの中身を判断の軸に据える必要がある。高級EVというイメージから距離を置くこともひとつの考え方だ。移動の価値がハードウェアの所有から、提供される知能の使い勝手へ移るなかで、消費者の選好もまた、触感や外観から処理の快適さへと移っていくことになる。