率直に言う テスラ「高級EV撤退 = 敗北」という考えは間違いだ――61%減益の渦中で下した“スペック競争”との決別

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テスラが高級EV「モデルS」「モデルX」の生産終了を決めた。最終利益61%減、売上高も初の減収。工場をロボット生産へ振り向けた判断は、EV競争の次を映す。

DXへの転換とその背景

テスラ(画像:Pexels)
テスラ(画像:Pexels)

 テスラが高級EVから距離を取る判断は、市場が成熟し、参入の前提が変わったことを踏まえた現実的な方向転換と受け止められる。

 EVは、もはやそれ自体が競争力を生む存在ではなくなった。デジタル化やAI、自動化を社会に広げていくための入り口として位置づけ直されている。高級EVが担ってきた象徴的な役割はここで一区切りを迎え、次の争点は、汎用的なEVと自動運転技術をどう結びつけるか、さらにエネルギー供給の仕組みが社会にどこまでなじむかへと移っている。

 EVは部品点数が少なく、新規参入の負担が比較的小さい。その分、価格競争に巻き込まれやすい。高級EVに限って見れば、開発や生産にかかる費用と販売台数の釣り合いが取りにくく、利益率は構造的に下がりやすい。

 AIへの投資の流れを追うと、テスラが車を売って得る収益よりも、自動運転やロボットといったAI基盤で規模を広げやすい分野へ、経営資源を移している様子が浮かぶ。ソフトウェアを中心に据えた事業への収束を、実務の段階で進めていると言ってよい。2025年10~12月期の決算では最終利益が前年同期比で61%減の8億4000万ドルとなり、EVメーカーとしての成長が鈍るなかで、この資源移動は避けられなかった。

 テスラは、オートパイロットやFSDと呼ばれる自動運転支援機能を自社で磨き、通信による更新で、購入後も価値が変わっていく車を目指してきた。日本経済新聞は、AI開発企業xAIに20億ドルを出資し、その基盤モデルをロボタクシーや工場の自動操業に使う方針を報じている。工場から購入者の自宅まで完璧に自動で走行して納車する構想とも、無理なくつながる話だ。

 テスラはソフトウェアの強みを背景に、自動運転分野で主導権を握ろうとしている。車を売った時点で終わる利益よりも、FSDやロボット制御用のプログラムを提供することで生まれる、追加コストの小さい収益の方が、資本効率は高い。経営陣は、EVを移動の手段として完結させるのではなく、AIが現実の社会に関与するための接点として扱っている。

 こうした集中は、エヌビディアやファーウェイといった強力な競合を意識した動きでもある。減益が続く局面でも投資の手を緩めず、AI企業への転身を押し進める背景には、ハードウェアの利幅に依存する構造を離れ、知的財産を収益の中心に据える事業形態をやり切ろうとする強い意思がにじんでいるのだ。

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