「EVが増えるほど税が消えていく……」 消失する約145兆円の代償――脱炭素の裏で低所得国が直面する“財政的自滅”へのカウントダウン
ガソリン暫定税率の廃止で、燃料税に支えられてきた道路財政が転換点を迎えた。世界で年約9200億ドルに達する税収は、EV普及で失われる可能性がある。走行距離課税と移動データ管理という次の選択が、国家財政と移動の自由を同時に揺さぶり始めている。
匿名性が失われていく移動

燃料税という、物理的な消費量に寄りかかった徴税の仕組みが終わりを迎えるということは、移動がこれまで享受してきた匿名性の高い自由が後退することを示している。道路インフラの維持費は長いあいだ燃料価格の中に溶け込む形で処理されてきた。だが電動化が進むにつれ、国家はインフラの減価分を個々人の走行データと直接結び付ける方向へ踏み出さざるを得なくなる。
この転換によって車両の基幹プログラムを掌握する企業は、実質的に徴税を支える基盤を担う存在へと近づき、官と民の力関係は大きく揺さぶられる。移動に関わる産業の担い手にとって走行データは付加価値を生むための材料にとどまらず、国家の歳入を下支えする公的な仕組みの一部へと位置づけが変わる。
市場に関わる主体は、この制度の変化がもたらす不安定さから目を背けることなく、移動がすべて確認の対象となる時代にふさわしい収益のあり方を模索する必要がある。脱炭素という後戻りできない流れの陰で、国家の財政に対する統制と個人の自由がせめぎ合う局面はすでに目前まで来ている。