「EVが増えるほど税が消えていく……」 消失する約145兆円の代償――脱炭素の裏で低所得国が直面する“財政的自滅”へのカウントダウン

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ガソリン暫定税率の廃止で、燃料税に支えられてきた道路財政が転換点を迎えた。世界で年約9200億ドルに達する税収は、EV普及で失われる可能性がある。走行距離課税と移動データ管理という次の選択が、国家財政と移動の自由を同時に揺さぶり始めている。

低所得国に迫られる制度改革

2026年1月23日発表。電気自動車(BEV/PHV/FCV)のシェア(画像:マークラインズ)
2026年1月23日発表。電気自動車(BEV/PHV/FCV)のシェア(画像:マークラインズ)

 税収の落ち込みへの対応は、政策の巧拙だけでなく、国そのものがどれほどの余力を持っているかという問題とも重なる。

 論文は「燃料税収への依存が大きく、制度を運用する力が弱い国々が最も深刻な局面に立たされている。世界的にバッテリーEVへの移行が想定以上の速さで進んだ場合、国際社会はこの二重の困難を抱える国々を支える必要に迫られる可能性がある」と述べている。税収構造と行政能力、その両方が試される。

 代替策として想定されているのは、炭素税や道路通行料、EVの輸入関税、電力使用量への追加課税などだ。高所得国ではすでに導入例があるが、低所得国にとっては実務面でも政治面でもハードルが高いケースが少なくない。こうした新しい課税の仕組みは、先進国が持つデジタル徴税の技術や運用の考え方を途上国の基幹的な仕組みに組み込むことを意味する。結果として制度面での主導権が一方的に及ぶ側面も否定できない。

 研究チームは、低所得国がEVの普及を抑え込むことなく別の税収源を確保していくためには、世界銀行や国連開発計画といった国際機関の関与が欠かせないと指摘する。こうした介入は各国の徴税の枠組みに国際的な統治の手順を直接組み合わせ、徴税権の運用がアルゴリズムに委ねられていく流れを一段と早める可能性を含んでいる。

 論文はまた検討すべき点として、さまざまな税制がEVへの移行を後押しするのか、それとも妨げるのかを見極めること、社会的な不利益を効率よく管理できる余地を残すこと、実施の際の障害を下げること、公平性を優先しやすくすることなどを挙げている。いずれも抽象論ではなく、実行段階で問われる論点だろう。

 EVへの移行は気候変動への対応としては合理的である一方、多くの国にとって重い財政課題を突きつけている。研究チームはそうした認識を示し、早い段階での税制の見直しと国際的な支援の必要性をにじませている。税制の穴が国際貿易での不利や成長の足かせとして表面化する前に、新たな枠組みをめぐる協調が求められる。

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