一度は消えた「駅ビル展望台」――いま“マチの顔”として復活している根本理由

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2025年秋、東京・高輪と大阪・淀屋橋で高さ約150mの無料展望施設が相次いで誕生した。かつて合理化で消えた「展望」が、体験型・滞在型として再評価される理由を、都市と商業の変化から読み解く。

「展望+α」が生む街全体の価値向上

22階建てのJR大分駅ビル「JRおおいたシティ」の中層屋上(8階)に設けられた「シティ屋上ひろば」。展望デッキに加えて遊具、神社など様々な機能を備える「体験型」の屋上で、マチナカ全体の魅力創出・価値向上に寄与する。大分県大分市(画像:若杉優貴)
22階建てのJR大分駅ビル「JRおおいたシティ」の中層屋上(8階)に設けられた「シティ屋上ひろば」。展望デッキに加えて遊具、神社など様々な機能を備える「体験型」の屋上で、マチナカ全体の魅力創出・価値向上に寄与する。大分県大分市(画像:若杉優貴)

 昭和の時代に見られた駅ビルや商業施設などの展望台は、その多くが「眺めのよさ」のみをウリにしていた。その一方で「展望の価値」が見直されるなか生まれた高輪ゲートウェイシティや淀屋橋ステーションワンの展望施設は、いずれも「飲食街にある見晴らしがいい場所」であるのみならず、複数の機能を併せ持つ「展望+α」の施設だという特徴がある。

 駅ビルや大型商業ビルが「交通機関」や「商業施設」としてだけではなく、「街の顔」として様々な機能を備えるようになった時代。近年は駅ビルや商業施設の競争激化もあり、かつてのように展望施設をはじめとして子供向けの遊戯場やイベント広場など、一見「大きな収益を生まない」と思われるような「遊び」ともいえる施設を充実させ、差別化をめざす駅ビルや商業施設も見られるようになった。

 今回紹介した高輪ゲートウェイシティのルフトバウムや、淀屋橋ステーションワンのスカイテラスのように、展望台に新たな技術を導入するなどして体験型・滞在型を意識した「展望+α」空間へと進化させた施設も、そうした動きのなかで生み出されたものであるといえよう。

 このような体験型・滞在型の展望施設が駅ビル・商業施設の新たな魅力を生み、地域全体の価値向上へと繋げることができれば、「マチの顔」である駅ビルや商業施設にとっても大きなプラスとなりうるであろう。今後もJR東京駅日本橋口に直結する日本最高層ビル「トウキョウトーチ」(東京都千代田区、2028年完成予定)やJR札幌駅に直結する駅東側エリアの開発(北海道札幌市中央区、2030年ごろ完成予定)をはじめ、全国各地で様々な「展望施設があるマチの顔」が生まれる予定となっている。

「2030年代の展望台」は、果たしてどういった進化を遂げているのだろうか。

【参考文献】
株式会社白木屋 編(1957):『白木屋三百年史』 白木屋.
株式会社三越編(1990):『株式会社三越85 年の記録』三越.
佐藤正忠(1994):『「そごう」に新しい神話がはじまった』経済界.
末田智樹(2010):『日本百貨店業成立史』ミネルヴァ書房.
朝日新聞, 2010 年5 月29 日:昭和6年オープン、日本初の屋上遊園地閉鎖へ 松屋浅草.

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