国際的な連携――M&Aで再建する日本車業界【連載】Make Japanese Cars Great Again(8)
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共通化が生むコスト削減とブランド希薄化

日本車はかつて「高品質」と「革新性」の象徴として、世界中で広く愛されていた。しかし、モビリティ環境が大きく変化するなかで、新たな課題に直面している。この連載「Make Japanese Cars Great Again」では、日本車がもう一度世界市場で輝くための具体的なステップを探る。過去の成功を振り返りながら、現在の課題にどう対応し、未来にどう進むかを考える。
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自動車メーカーの統合で、必ずといっていいほど持ち出されるのがスケールメリット(生産規模の拡大によって単位当たりのコストを下げる効果)だ。その代表例として語られてきたのがフォルクスワーゲン(VW)グループである。ドイツのVWを中核に、セアト、シュコダ、ランボルギーニ、ポルシェなどの経営権を次々と取得し、巨大グループを形成してきた。
VWグループが進めてきたのは、車両の基盤となる
「プラットフォームの徹底した共通化」
だ。バッテリー式電気自動車(BEV)ではバッテリーやモーターの組み合わせまで含め、量販車向けのMEB、高級車向けのPPEといった共通基盤を開発した。給電システムやソフトウェアもグループ内での共通化が進む。バッテリーセルを共通化すれば、
・エントリーモデル:最大50%
・上級モデル:最大30%
のコスト削減が可能だとしてきた。
モジュール化と部品共通化を極限まで突き詰めれば、コスト削減効果が得られるのは事実だ。一方でその反動も小さくない。ブランド間の違いがデザインや内装に収れんし、いわゆる乗り味の差が見えにくくなるという弱点が生じる。さらに統合によって企業規模が拡大するほど、財務面の負担も重くなる。
VWグループは2025年第3四半期決算で約11億ユーロ(約1840億円)の損失を計上し、2025年累計では約34億ユーロと、前年から61.5%減少した。巨額損失の背景として指摘されているのが、米国の関税政策の影響による
「ポルシェの不振」
だ。加えてポルシェ取得にともなう
・のれん(企業を買収した際、資産価値を上回って支払った分として計上される無形資産)の減価償却
・製品戦略の見直し
により、約75億ユーロ、1兆円を超える負担がのしかかっている。経営のかじ取りを難しくしているのが、統合によって複雑化した
「株主構成」
である。ポルシェ家とピエヒ家が経営権を持つポルシェSE、さらにニーダーザクセン州などの大株主が存在し、利害調整は容易ではない。巨大化がもたらした恩恵と同時に、その重さもまた無視できなくなっている。