「欧米EV失速 = 日本の勝利」という危うい幻想――中国知財への依存が招く構造的リスクとは
タイでは新車の4台に1台がEV、インドネシアでも前年比2.7倍の販売増。欧米の規制緩和と政策転換に安堵する間に、新興国と中国勢の電動化攻勢が、世界自動車産業のパワーバランスを急速に書き換えている。
石油供給の遮断リスクと電池供給網の依存リスク
エネルギー問題については、中東情勢の緊迫化にともなう化石燃料の物理的な遮断リスクがある。一方で、中国が主導する鉱物資源・電池生産の構造的依存リスクがある。
中国は過去10年以上に亘る国家的かつ戦略的な取り組みの成果として、世界のEVバッテリー市場で圧倒的な地位を確立した。強力なEVバッテリーのサプライチェーンを構築し、世界のEV用バッテリー生産界で中国企業は2021年時点でバッテリーセル製造の約80%を占める迄に成長した。欧米諸国は中国の後塵を拝している。最早中国と敵対することは、EVの普及の大きな阻害要因になりうる状況だ。こうしてガソリン車とEVのいずれにもエネルギーのリスクが存在する訳だ。
既存の石油流通インフラの維持コストが20%程度は上昇しており、ガソリンスタンドのタンク更新にも高いコストがかかる。この状況では、分散型電源と直結可能な小型電動移動体が地方部の生活圏を守る上で、実用的に優位性を持つ。特定の国に資源を依存する脆さを抱えつつも、現地生産および技術移転をセットで提案可能な中国勢の
「供給網の現地化戦略」
は新興国の産業政策を惹きつける効果的なメカニズムともなる。