「今から帰ります」その一言が常識に――80年代、駅の公衆電話に行列を作った「カエルコール」を覚えているか

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1985年、NTTが打ち出した帰宅前の一報「カエルコール」は、電話利用を前年度比14%増に押し上げ、情報の先行送信が移動効率と生活リズムを変える契機となった。

競合出現と料金戦略

駅で電話する昭和のサラリーマンイメージ。
駅で電話する昭和のサラリーマンイメージ。

 NTTがこのような施策を導入した背景には、市場の開放と競合の出現を見据えた細かな収益戦略が存在した。電電公社の民営化によって誕生したNTTは、1984(昭和59)年に第二電電(現在のKDDI)という強力なライバルの参入に直面していた。当時のNTTの電話網は市内通話の部分が赤字であり、黒字の市外通話の値下げに使う資金を確保するために、通話料を大幅に増やす必要があった。

 真藤恒社長は1986年3月2日付の朝日新聞で、

「通話量が増えて収入も増えれば、もうけを内部にため込むのではなく、次の値下げの原資にする。便利になって、利用が増えて、料金が下がる、という動きこそ、電電を民営自由化した目的なのだから」

と述べている。この方針のもと、カエルコールに続いて、単身赴任者の朝を繋ぐ「コケコッコール」や、年末の帰省に先駆けて声を届ける「ふるさとカエルコール」を展開した。

 結果として、電話の利用は前年度より14%増えた。特に遠距離通話の利用が大きく伸び、12月分の通話料収入は前年度より6%増を達成した。これは、実際の帰省ラッシュという大規模な移動が起きる前に、通信網が移動の先行きを示す役割を果たし、実際の移動と情報のやり取りが相乗効果を生み出した結果である。

 情報の移動が実際の移動のきっかけとなり、かつその移動を円滑にするための話し合いを行う仕組みは、今の予約システムや変動する価格設定へとつながる考え方を確立した。

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