「今から帰ります」その一言が常識に――80年代、駅の公衆電話に行列を作った「カエルコール」を覚えているか
1985年、NTTが打ち出した帰宅前の一報「カエルコール」は、電話利用を前年度比14%増に押し上げ、情報の先行送信が移動効率と生活リズムを変える契機となった。
流行語を生み出した演出力

これまで個人の気遣いに留まっていた連絡を、社会全体の強い習慣へと発展させたのは、CMディレクターの市川準氏による演出の力である。市川氏は1985年に「禁煙パイポ」のCM「私はコレで会社をやめました」で第2回日本新語流行語大賞・流行語部門・大衆賞を受賞し、その後も「金鳥 ゴン」の「亭主元気で留守がいい」や「サントリーオールド」を通じて多くの人の意識を形作ってきた。
彼の演出で最も特徴的なのは、禁煙パイポのCMに登場した東京都職員のように、作品に素人を起用することにあった。これが移動中の通信を日常生活に欠かせない行動へと位置づけた。
駅という場所で足を止めて家族へ声を届ける行為を広めることで、移動の流れの中に情報を更新する段階を組み込むことに成功した。この演出は、移動を一時的に止める行為を、目的地での過ごし方をよくするための必要な投資へと変えた。
カエルコールは、移動する人間に情報を同期させる機能を持たせ、都市生活における移動の効率を高めたのである。