「EV = お得」は終焉か? 28年重量税導入&再浮上の走行距離税――環境優遇から受益者負担への冷徹転換

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2028年からEV・PHVに重量税導入が決まり、ガソリン税減収にともなう財源確保と脱炭素の両立が課題となる。総コスト優位性が揺らぐなか、走行距離課税も視野に入り、EV普及策と負担公平性の調整が問われている。

EV普及と財源減少

自動車と各税のイメージ(画像:写真AC)
自動車と各税のイメージ(画像:写真AC)

 日本国内に目を向けると、将来的なEVの普及は、これまで道路網の整備や維持を支えてきたガソリン税収の減少という構造的な課題を浮き彫りにする。走行距離税の検討は、持続可能な交通インフラを維持するために避けて通れない論点だ。

 現在の日本のEV普及率は約2%にとどまるものの、2023年度のガソリン税収はすでに前年から6%減少しており、財源不足は現実の脅威として迫っている。代替財源の確保が遅れれば、道路の修繕や次世代の交通網整備といった公共事業の停滞を招く恐れがある。

 試算によれば、年間1万kmを走行した場合のガソリン税負担は約4万円に達する。これを走行距離税で補填する場合、

「1kmあたり4円程度」

の課税が均衡点となる。走行距離の把握には車載全地球測位システム(GPS)や通信端末、あるいは車検時のメーター確認といった手法が想定されるが、これは車両が移動データを介して行政システムと常時接続されるネットワークの基端となることを意味している。

 こうした制度導入の利点は、受益と負担の公平性を確保できる点にある。EV利用者が道路維持コストを負担していない現状の不均衡を是正し、走行量に応じた課税は無駄な走行の抑制を通じて環境負荷の低減にも寄与する。また、動力源の種類に左右されない安定した財源を確保することで、将来にわたる交通網の質を維持することが可能となる。

 その一方で、産業や生活への負の影響に対する懸念は根強い。特に「2024年問題」による人手不足とコスト増に苦しむ物流業界にとって、走行距離に連動する新たな税負担は、経営を直接的に圧迫する要因となる。この負担増は、最終的に物流コストの上昇として商品価格に反映され、社会全体の物価を押し上げる圧力となりかねない。

 また、日常生活において長距離の移動が不可欠な地方部では、都市部に比べて負担が極端に重くなる傾向があり、地域間の格差を助長する恐れがある。さらに、移動履歴という機微な情報の取り扱いに関するプライバシー保護の徹底や、計測機器の導入にともなうユーザーの追加負担など、解決すべき実務的な課題は多岐にわたる。

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