EV一色では回らない――サプライヤー再編が招いた「部品の集まりすぎ」という新リスク【連載】自動車部品業界ウォッチ(4)

キーワード :
, , , , , , , ,
EVシフトの減速とハイブリッド回帰が進むなか、自動車部品業界では再編が加速している。世界シェア6割を握る企業の誕生や供給遮断リスクが顕在化するなか、効率化と集中が新たな脆弱性を生む構図が浮かび上がる。

ネクスペリア出荷停止が突きつけた地政学リスク

ネクスペリア(画像:ネクスペリア)
ネクスペリア(画像:ネクスペリア)

 オランダに本拠を置く半導体メーカーのネクスペリアは、売上の6割を自動車向けが占める供給網の要となる企業だ。同社は2018年に中国企業に買収されたが、2025年10月ごろから発生した半導体の出荷停止は、世界中の自動車メーカーの生産ラインを揺るがす事態となった。これは特定のサプライヤーに依存しすぎる体制が、いかに脆いものであるかを証明した事例といえる。

 問題の背景には、安全保障上の懸念から同社を管理下に置こうとしたオランダ政府の介入があった。これに中国側が強く反発して出荷停止措置を講じたことで、車両生産に欠かせない半導体が瞬く間に不足した。特定の国や企業が供給の鍵を握る状況では、純粋な経済活動が国家間の対立に巻き込まれ、供給が人質に取られる危うさをはらんでいる。

 結果として一部の部品調達が不可能になり、自動車メーカーは大幅な減産や工場停止を余儀なくされた。現在は政府間の交渉で出荷は再開されたが、1か月から2か月に及ぶ供給遮断は、特定企業への依存が経営を根底から揺るがす事実を浮き彫りにした。

 国内メーカーの間でも、この事態への対応で明暗が分かれた。トヨタ系のサプライヤーは、これまでの教訓から半導体の在庫を十分に確保していたため影響を最小限に抑え、トヨタやダイハツ、スズキなどは世界販売を伸ばす結果となった。対照的に、在庫を最小化していたホンダや日産系のサプライヤーは供給不足の直撃を受け、度重なる減産によって世界販売が大きく落ち込んだ。

 ネクスペリア事件が残した課題は極めて重く、再発防止に向けた供給網の見直しが、今や自動車メーカーとサプライヤー双方にとって最優先の経営課題となっている。

全てのコメントを見る