EV一色では回らない――サプライヤー再編が招いた「部品の集まりすぎ」という新リスク【連載】自動車部品業界ウォッチ(4)
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ハイブリッド回帰で加速するエンジン部品の寡占化

EVシフトの加速により、かつては「将来的にエンジン搭載車は消滅する」という予測が定説のように語られてきた。しかし2024年を境に、その勢いは明確に減速している。
この流れを決定づけたのが、欧州連合(EU)による政策の方向修正だ。執行機関である欧州委員会は2025年12月16日、35年にエンジン車の新車販売を原則禁じる目標を撤回する案を発表した。中国製EVの価格攻勢に苦戦する欧州メーカーの現状やドイツ政府の強い反発を踏まえ、一定の条件下でエンジン車併売を容認する現実的な路線へとかじを切った。
この方針転換によって、実用性に優れたHVが再び市場の主役となり、エンジンの需要も回復傾向にある。動力源がモーターへ全面的に切り替わる時期は想定よりも大幅に遅れる見通しとなり、サプライヤー各社は将来の主導権を確保するため、事業統合や企業の合併・買収(M&A)を通じた生き残り策を加速させている。
EVシフトの過程でエンジン事業から撤退する企業が増える一方で、その事業をあえて買い取ることで供給体制を強固にする動きが活発化している。国内では日本特殊陶業とデンソーの動きが象徴的だ。デンソーが保有していたスパークプラグや酸素センサー事業を日本特殊陶業が1800億円で譲受したことで、日本特殊陶業のスパークプラグの世界シェアは6割に達した。これは世界のエンジン生産の過半数が同社の供給能力に依存していることを意味しており、特定企業が市場の維持に不可欠な役割を担う構造が鮮明になっている。
また海外資本が日本のサプライヤーを傘下に収める動きも進んでいる。インドのマザーサンは2023年に、ホンダがEVシフトを見据えて手放した燃料タンク製造の八千代工業(現マザーサンヤチヨ・オートモーティブシステムズ)を買収した。現在はマザーサン傘下でホンダ以外のメーカー向けにも生産を拡大しており、HVの需要回復という恩恵を最大限に享受している。さらにマザーサンは、旧カルソニックカンセイを前身とするマレリの買収にも意欲を示しており、実現すれば巨大な部品供給連合が誕生することになる。
こうしたサプライヤーの一極集中は、経営効率を高める一方で、供給網のどこか一箇所が遮断された際に全体が停止してしまう深刻なリスクを内包している。