EVの航続距離を「木材」が伸ばす? 鋼鉄を凌駕する強靭さと軽さを備えた素材の正体

キーワード :
日本の国土の7割を占める森林資源が、自動車素材の新たな可能性を切り拓く。伝統的な内装材からセルロースナノファイバーによる軽量複合材まで、木材は燃費改善や脱炭素化を後押しする次世代技術のカギとなる。

加工木材と耐久性の両立

森林(画像:Pexels)
森林(画像:Pexels)

 構造用途からは後退したものの、木材は自動車内装で現在も重要な役割を担っている。高級車ではダッシュボードやドアトリム、センターコンソールに天然木ベニヤが用いられる。木材は金属や樹脂と異なる温かみと質感を備え、自然の木目はふたつとして同じものがなく車に個性を与える。経年変化により、その味わいはさらに深まり、高級感を強める。

 近年では無垢材よりも加工木材や装飾用積層材が主流だ。反りや割れといった木材特有の欠点を抑えつつ、耐久性や品質の均一性を確保できる。内装材としての木材は、感性価値と工業的合理性の両立を実現する素材として定着している。

 トヨタは2016(平成28)年に木材を用いたコンセプトカー「SETSUNA」を発表した。従来は装飾的トリムにとどまっていた木材を、SETSUNAではボディパネルのほぼ全てに使用している。外装パネルには杉、フレームには樺を用い、用途に応じて複数の木材を使い分けた。さらに「送りあり」や「くさび」といった日本の伝統的木工技術を活用し、金属製留め具に依存しない接合方法を採用している。

 量産車ではなく工芸品として製作されたものだが、木目のボディには独特の魅力がある。

全てのコメントを見る