「選択と集中」の終焉? トランプ経済圏とEV失速に挑む、日本車の「探索・分散サバイバル戦略」
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米国関税政策の波

筆者(北條慶太、交通経済ライター)は以前、興味深いコラムを読んだ。日本商工会議所発行のビジネス情報誌「月刊石垣」2025年5月号、亜細亜大学都市創造学部教授・後藤康浩氏の連載「アジアの風~ビジネスの先を読む~」の「荒れる世界経済に「探索と分散」で立ち向かえ」である。内容を整理すると以下の通りである。
米国のトランプ政権は日替わりのように新たな関税政策を打ち出し、世界経済を揺るがしている。各国は交渉で関税の相互引き下げを求めるが、大きな譲歩は得られていない。関税による米国製造業再生は政権の信念であり、日本企業はこれを前提とした経営戦略に切り替える必要がある。その際に重要なのが「探索と分散」である。
ここでいう「探索」とは、関税の動向を追うことだけではない。商流や物流の変化、生産地や生産企業のシフト、新たな市場の勃興といった兆しに目を向けることを指す。小さな変化も見逃さず、手探りで情報を収集する姿勢が求められる。そして得た情報を生かすには「分散」が不可欠だ。かつては「選択と集中」によって利益を伸ばす戦略が有効だった。しかし、不確実性の高い現代においては、「探索と分散」が基本戦略となる。
後藤氏は中国・広東省の工場視察の事例を挙げ、日系企業が生産移管や部品輸出、米国内での組立などを通じて「探索と分散」を実践している点を指摘している。中国企業も内需刺激策や内陸市場攻略により分散型戦略を採用しており、自動車産業などにおいても参考になる戦略だと提案している――。
さて、自動車は高額な製品であり、開発には長い期間を要する。規制や政策の影響も大きく、一定のリスクを抱える産業である。従来の「選択と集中」はリソースを一点に傾ける戦略であり、変化には弱い。変化の激しい社会や市場に適応するには、「探索と分散」を組み込んだ戦略が不可欠である。本稿では、自動車業界が見落としがちな「探索と分散」の重要性について考察する。