「選択と集中」の終焉? トランプ経済圏とEV失速に挑む、日本車の「探索・分散サバイバル戦略」
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筆者への反対意見

一方、高額な製品で開発コストの大きい自動車産業では、リソースを集中させることが技術優位を維持する上で不可欠な側面もある。自動車業界は現在、DX化による大きな変革期を迎えており、特にEV化、自動運転技術、コネクテッドカー、MaaS(Mobility as a Service)などの分野に重点的に投資する必要があるとの考えがある。重点分野に集中することで技術競争力や市場投入スピードを確保できる利点は無視できない。
一方で、新市場や生産地の兆候を追う探索には人的リソースや情報分析の負荷が大きく、過剰な探索は意思決定の遅延につながるリスクもある。現場の技能人材不足も深刻である。2025年時点で、自動車製造業の有効求人倍率は1.6倍から1.7倍と、人材確保が困難な状況が続く。
国土交通省の調査によれば、自動車整備士を志す専門学校生の数は2003(平成15)年の約1万2000人から2020年度には約6500人に減少し、整備専業事業者の整備士の平均年齢は52歳を超えている。この状況で探索に人的リソースを割くことは、短期的な事業運営上の負担となる。
また、事業所の統合はコスト削減の観点で一般的だが、生産・組立・販売・整備を分散・細分化すると、統制や品質管理の負荷が増し、全体効率の低下リスクが高まる。日産の例では、2024年度の最終損益が6708億円の赤字に転落し、追浜工場の閉鎖を含む再建計画で2026年度までに5000億円のコスト削減を目指す方針である。分散戦略の効果は見込めるが、管理コストやエネルギー消費を抑える必要もある。
さらに、日本の自動車メーカーは元来、縦割り組織やトップダウン型の文化が根強く、探索・分散型戦略の導入には組織変革が不可欠である。技術志向の採用・評価制度では、探索型人材の活躍が制約される可能性もある。現実的には、探索・分散戦略を前面に押し出すよりも、重要技術や拠点は集中させつつ、リスク分散や新市場探索は段階的に行う「ハイブリッド戦略」がより現実的である。
以上のように、探索・分散戦略には柔軟性や長期的競争力の確保という利点がある一方で、人的・組織的制約、コスト負荷、短期効率への影響などの制約も存在する。この点を踏まえ、戦略を構築する際には、探索・分散のメリットと限界の両方を意識する必要がある。