「選択と集中」の終焉? トランプ経済圏とEV失速に挑む、日本車の「探索・分散サバイバル戦略」

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米国関税の変動で揺れる世界経済。日本の自動車業界は開発コスト高と人材不足の制約下、「探索と分散」を組み合わせたハイブリッド戦略で競争力を守れるかが問われている。

筆者の意見

ドナルド・トランプ米大統領(画像:EPA=時事)
ドナルド・トランプ米大統領(画像:EPA=時事)

 自動車業界や人材採用の現場では、「探索と分散」の意義が十分に理解されていない。大学で自動車工業者を育成する現場を取材すると、探索的調査に注力する場はまだ少ない。

 探索的調査とは、現在の自動車業界を取り巻く混沌とした状況や曖昧な問題に対して行う調査である。新たな洞察を得ながら、問題の本質を徐々に明らかにすることを目的とする。顧客の隠れたニーズの把握、新しい市場機会の発見、商品開発やビジネスアイデアの仮説立案に役立つ手法だ。

 日本の自動車業界で探索が弱いのは、工業技術者向けの高等教育においてこの手法の習得機会が少ないことが背景にある。大学での教育が弱いため、そのセンスが製造業界全体に浸透しにくい構造となっている。

 リソースを一点に集中させるだけでは、新規事業の拡張や社会の変化への対応が難しくなる場合が多い。国内の自動車製造産業を取材すると、インターネット時代に理想とされる「自律分散協調型」の製造コミュニティーに十分に追随できていない現状が見えてくる。

 混沌とした複雑な問題に対応するため、社会探索型人材の育成は大学で始まり、ようやく定着しつつある。しかし、この教育は工学部のカリキュラムに組み込まれることは稀で、多くは経営経済系や文理融合型の学際系学部に限られる。国内の自動車製造産業では、使いやすい中堅技術者を多く採用する傾向が強く、社会探索型人材の価値は評価に反映されにくい。

 インターネット時代では、自律分散協調型の働き方で成果を出しやすい環境になっている。だが国内自動車産業は海外拠点が少なく、災害や政策変動に備えた分散戦略も不足している。「選択と集中」の呪縛に縛られたまま、変化への対応が遅れているのが現状である。

 米国のトランプ政権は、前のバイデン政権と異なり、電気自動車(EV)に対して慎重な姿勢を取る。日本の政府与党も「環境性能割」2年間停止の方針を固めた。

 環境問題は、短期的に私たちの生活に致命的な影響を与えるものではない。物価高騰や自動車の販売不振が生じれば、環境性能車の普及支援も停滞するのはやむを得ないと考えられる。政策変動や市場の不確実性に即応できるかどうかが、収益性や持続性に直結する時代である。

 こうした状況を踏まえ、混沌とした環境を見据えて「探索と分散」を戦略に組み込むことが、長期的な競争力の確保につながる。日本の自動車業界は、依然としてリスク分散への注力が不足している現状である。

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