スエズ運河はもう不要? 運賃高騰&ロシア依存の「北極海ルート」 日本は安全・効率の狭間でどう判断すべきか

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紅海情勢の悪化でアジア~欧州貨物は南周りルートを強いられ、コンテナ運賃は2024年7月に8828ドルまで急騰した。注目は北極海航路で、初航行船は18日で欧州に到達。距離短縮と海賊回避の利点が、次世代物流の選択肢として浮上している。

北極海航路の利便性と国際情勢の制約

貨物船イメージ(画像:Pexels)
貨物船イメージ(画像:Pexels)

 北極海ルートには、時間短縮のほか、

「海賊多発地域を回避できるメリット」

がある。アジア~欧州航路では、海賊被害が悩みの種だ。アジア海域では武装集団による海賊事案が多発している。国際海事局(IMB)の報告によると、2024年の全世界の海賊等事案116件のうち、約75%にあたる88件がアジア海域で発生した。特にシンガポール海峡の事案は、近年再び増加傾向にある。航路の安全性の点では、北極海ルートが有力な選択肢となる。

 しかし問題がないわけではない。北極海航路の利用には、

「ロシアとの良好な関係」

が不可欠だ。ウクライナ侵攻以降の微妙な国際関係が制約となる。シー・レジェンド・シッピングの初航行も、中国とロシアの関係があってのことだ。中国は一帯一路の選択肢として、北極海航路を含む氷上のシルクロードを重視している。日本が北極海ルートを積極的に利用する場合は、

・国際情勢の緊張緩和
・北米大陸沿岸を通る北西航路の開発

のいずれかが必要になる。北西航路は定期航路として利用するには、地形や自然条件が北極海航路より厳しい。しかし、さらなる温暖化を見据えれば、航路開発の余地は残されている。

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