スエズ運河はもう不要? 運賃高騰&ロシア依存の「北極海ルート」 日本は安全・効率の狭間でどう判断すべきか
紅海情勢の悪化でアジア~欧州貨物は南周りルートを強いられ、コンテナ運賃は2024年7月に8828ドルまで急騰した。注目は北極海航路で、初航行船は18日で欧州に到達。距離短縮と海賊回避の利点が、次世代物流の選択肢として浮上している。
北極海航路の運航ルール

北極海航路を使用するには、ロシア国内法に基づく航行手続きが必要だ。国連海洋法条約により、沿岸国は船舶による海洋汚染防止のための法令を制定・執行する権限を持つ。許可なしの航行は認められない。夏期であっても氷をかき分けて進む場合があり、許可なしの航行は無謀といえる。
ロシアの北極海航路局は、
・航行する海域
・船舶の砕氷・耐氷性能を示す氷海船級
・航行時の海氷条件
などをもとに許可を出す。場合によっては、国営企業ロスアトム社の砕氷船によるエスコートや水先乗船が義務付けられることもある。近年では、申請した船舶の約半数が氷海船級を有していなくても航行が可能になっている。
それでも北極海航路をさらに活性化させるには、航行可能な船舶の開発や、ロスアトム社の砕氷船や救助船の増備が必要だ。ロスアトム社が建造中の新型原子力砕氷船は、最大4.3mの氷を砕く能力を持ち、世界最強級の砕氷船とされる。航路を安定的に利用できるようになるには、もう少し時間が必要だろう。