スエズ運河はもう不要? 運賃高騰&ロシア依存の「北極海ルート」 日本は安全・効率の狭間でどう判断すべきか

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紅海情勢の悪化でアジア~欧州貨物は南周りルートを強いられ、コンテナ運賃は2024年7月に8828ドルまで急騰した。注目は北極海航路で、初航行船は18日で欧州に到達。距離短縮と海賊回避の利点が、次世代物流の選択肢として浮上している。

北極海ルートによる東アジア~欧州最短航路

貨物船イメージ(画像:Pexels)
貨物船イメージ(画像:Pexels)

 2025年9月、シンガポールに本社を置く中国系海運会社シー・レジェンド・シッピングの船舶が北極海航路を初航行した。舟山港(寧波市)と英国のフェリクストウ港を18日で結んだ。

 南周りのう回ルートでは少なくとも30日かかるため、半分以上の短縮効果がある。距離を比較すると、

・紅海ルート:約2万1000km
・南周りルート:約2万7000km
・北極海ルート:約1万3000km

である。紅海ルートより8000km、南周りルートより1万4000km短く、北極海ルートの距離の短さが際立つ。

 北極海ルートは、東アジアと欧州を最短で結ぶ航路として古くから知られていた。しかし冬期はもちろん、夏期でも氷に閉ざされており、現実的な航路利用は難しかった。地球温暖化による海氷の減少が、この状況を変えた。氷の面積が縮小し、夏期(6月後半~11月後半)の航行が可能になったのである。北極海ルートには、

・ロシア沿岸を通る「北東航路」
・北米沿岸を通る「北西航路」

がある。一般的に北極海航路(NSR)と呼ばれるのは北東航路だ。北極海航路は2010年以降、ロシアを中心に利用されてきた。総貨物量は2016年の約748万tから、2024年には約3790万tまで増加している。背景には2017年に稼働したヤマルLNGプラントの出荷開始がある。

 2022年8~9月の航行実績は約250隻だった。一方、北西航路は観光クルーズが主体で、貨物輸送もあるが2022年は10隻未満にとどまる。アジアと欧州を結ぶ航路の開発はロシア政府が以前から積極的に進めており、北極海航路が中心となっている。

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