駅前の店がすべて消えた「京成立石」──“失敗が許されない再開発”で揺らぐ下町文化と、コスト増・訴訟が示す構造的リスク

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京成立石駅北口の再開発は、710戸のタワーマンションや葛飾区役所移転、バスロータリー整備を含む大規模事業だ。建設費は2024年時点で約1186億円に膨張し、住民の反発やテナント運営の複雑化も指摘される中、下町の賑わいをどう維持するかが問われる。

高架下スペースの活用可能性

取り壊された「呑んべ横丁」(画像:写真AC)
取り壊された「呑んべ横丁」(画像:写真AC)

 筆者が気になるのは、立体交差事業を通じて関わる

「京成電鉄の考え」

である。立石駅にバスロータリーを整備し、葛飾区役所を移転させ、商業施設もつくるとなれば、葛飾区の行政・交通・商業の中心を立石に置くことになる。しかし、現状の京成立石駅は各駅停車しか止まらない。再開発で区内や周辺から人が集まるとすれば、現状のままでは不便が過ぎる。

 京成電鉄では、押上線から成田空港に乗り入れる有料特急の新設も検討している。再開発後に、隣駅の青砥駅のように有料特急を含め多くの列車を停車させる拠点にするのか、それとも各停のみとするのかは集客に直結する重要な問題である。

 また、再開発と同時進行で進む押上線の立体交差事業において、高架下の活用も課題だ。「京成押上線(四ツ木駅~青砥駅間)連続立体交差事業」では、高架下の活用法が長年検討されてきたが、現状では具体的な情報は見当たらない。沿線で商売を続けたい商店主に対し、低賃料で提供することはできないだろうか。

 実際、高架下の商業施設はJR東日本の秋葉原駅~御徒町駅や有楽町駅~新橋駅、東急の中目黒駅周辺で例がある。立石でも、再開発で立ち退きになる居酒屋の一部を

「高架下に移転させる」

ことは可能ではないか。南口の居酒屋の常連客からも同様の要望が聞かれている。立石駅周辺の店舗経営者には、まだ商売を続けたいと考える人も多い。そうした地元事業者に提供できれば、地域の賑わいを維持する手立てになるだろう。

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