駅前の店がすべて消えた「京成立石」──“失敗が許されない再開発”で揺らぐ下町文化と、コスト増・訴訟が示す構造的リスク
京成立石駅北口の再開発は、710戸のタワーマンションや葛飾区役所移転、バスロータリー整備を含む大規模事業だ。建設費は2024年時点で約1186億円に膨張し、住民の反発やテナント運営の複雑化も指摘される中、下町の賑わいをどう維持するかが問われる。
再開発計画の現場像

筆者(宮田直太郎、フリーライター)は11月初旬の3連休に、立石の現状を確かめるため現地を訪れた。駅北側では建物がすっかり取り壊され、かつて賑わっていた街は完全に姿を消していた。
壁には、立石に本社を置くタカラトミーの看板商品「ベイブレード」や、沿線ゆかりの漫画「キャプテン翼」の絵が描かれている。そのなかに、再開発で整備される施設の全体像を示す看板もあった。取り壊した後に、行政と商業の中心として立石に新たな賑わいを創出しようとする姿勢は伝わってくる。
しかし、現地で看板を見た人からは
「このタワーマンション、誰が入居するのか」
といった声も聞こえてきた。葛飾区が入居する東棟では、1階よりも3階の床単価が高くなる現象もあり、住民の間には
「不当に高く取得しているのでは」
との懸念がある。集団訴訟に発展する動きも見られる。訴訟の詳細は中川寛子氏が東洋経済オンラインで掲載した記事「あんなに愛された街が…「立石再開発」微妙な現状」に詳しい。住民の再開発に対する懐疑の強さがうかがえる状況である。