駅前の店がすべて消えた「京成立石」──“失敗が許されない再開発”で揺らぐ下町文化と、コスト増・訴訟が示す構造的リスク
京成立石駅北口の再開発は、710戸のタワーマンションや葛飾区役所移転、バスロータリー整備を含む大規模事業だ。建設費は2024年時点で約1186億円に膨張し、住民の反発やテナント運営の複雑化も指摘される中、下町の賑わいをどう維持するかが問われる。
賑わいを残す老舗と新たな挑戦

続いて駅を超え、2年後に再開発が始まる南口のアーケード街を歩いた。アーケード街は昭和の時代がそのまま残ったような雰囲気で、確かに古い。再開発を控え、シャッターが閉じた店もあり、寂しさが漂っていた。
ただ、昼間にもかかわらず満席で入れない居酒屋もあり、まだ賑わいを保つ店も残っていた。経営者は高齢者ばかりではなく、有名人のサインを掲示する店も見られた。立石で商売を続けたいと考える人は少なくない印象だった。
南口の住民や事業者は再開発をどう見ているのだろうか。ある居酒屋の経営者は
「失敗が見えている」
「再開発ビルは賃料が高すぎてとても入れない。どこに移転するかまだ決めかねている」
と話し、再開発には乗り気でない様子だった。その店の常連客は「飲む場所が消えてしまう」と嘆き、街の将来を憂えていた。別の店の店主は
「建設資材の高騰で再開発自体が遅れている。商店街が地震で潰れるのが先か、ビルが立つのが先か、わからない」
と困惑を隠せなかった。北口の進捗や費用増が南口側の事業者や住民心理にも影響し、街の先行きに不透明感を与えている。