EV一辺倒は幻想? 「ハイブリッド需要」揺り戻しで浮き彫り、部品メーカーの辛らつ現実【連載】自動車部品業界ウォッチ(1)

キーワード :
, ,
EVシフトで自動車産業の重心はガソリン車からEVへ移行し、2035年にはエンジン部品の売上半減が予想される。国内大手サプライヤーは事業再編を進め、電動化技術とHV応用技術の両立を模索している。

ニデックの電動化戦略と苦境

デンソーのウェブサイト(画像:デンソー)
デンソーのウェブサイト(画像:デンソー)

 ここ数年、EVへのシフトは自動車業界の主流となっている。しかし近年、ハイブリッド車の需要がやや盛り返すなど、電動化の流れには揺り戻しも見られる。その影響を受けているのがニデック(旧・日本電産)である。

 ニデックは家電や産業用製品に加え、車載用の各種モーターを手がけ、モーター関連事業で成長してきた企業だ。この技術を活かし、早くから電動車向けモーター事業に参入し、2019年には量産EVへの搭載実績を持つ。EVシフトに先行した事業転換を進めたが、現在はEV関連事業が度々赤字となり、経営の重荷となっている。

 背景には、中国市場でのEV普及の急速な進展がある。2020年から2022年にかけ、多くの新興EV企業が登場し、電動モーターの需要は急増した。しかし需要の急伸に伴い、市場は短期間で飽和し、競争は激化、価格は下落した。その結果、ニデックの「eアクスル」事業は採算が悪化し、企業業績にも影響を及ぼしている。

 2025年9月期の中間連結決算では、営業利益は前年同期比で約8割減の211億円、純利益は約6割減の311億円となった。車載用製品部門を中心に、EV用モーター制御部品の契約損失引当金364億円や非金融資産の減損損失316億円を計上し、経営を圧迫した。加えて、イタリア子会社の貿易取引や中国子会社の会計処理に関する調査も進められ、東証からは特別注意銘柄に指定されている(『時事通信』2025年11月14日付け)。

 ニデックの事例は、EV市場の予測と現実のギャップが企業戦略に与える影響を示す好例だ。需要の急変、競争環境の変化、価格圧力、さらに財務・ガバナンス上の課題が重なり、市場要因が経営の安定性に直結することを浮き彫りにしている。こうした状況は、サプライヤーが市場の変化に柔軟に対応する必要性を改めて示している。

全てのコメントを見る