自動車ディーラーの営業マンが、昭和・平成ほど「自宅に来なくなった」根本理由
かつて一軒一軒訪問して車を売った営業担当者も、働き方改革と個人情報保護、ウェブ購入の浸透で姿を消した。J.D.パワー調査では満足度723点、変化する顧客行動が業界構造を刷新している。
飛び込み営業の時代

日本が本格的なクルマ社会を迎えた時代、営業担当者は一軒一軒住宅を訪ねて売り歩く“飛び込み営業”が主流だった。経験の浅い担当者にとっては、どの家が見込み客になるか、どの時間帯に訪問するのが効果的かを経験で学び、自分なりの営業手法を確立する貴重な場でもあった。当時の営業スタイルは、単に車を売る手段であるだけでなく、地域経済やコミュニティとの接点を生み出し、自動車普及の加速にも寄与していた。
かつては、店頭接客後に“いけそう”と判断した顧客宅へアポイントなしで訪問するスタイルも一部に存在した。ナンバープレートから住所を割り出して訪問する手法もあったが、現代の個人情報保護法施行後は原則として禁止されている。この手法は、経済成長期における自動車市場拡大と都市化の進行を背景に成立していたことも忘れてはならない。飛び込み営業は、営業担当者の技能や人材育成の場としても機能し、業界全体の人的資本の蓄積につながった。
しかし近年は、働き方改革の影響で営業時間の見直しが進んでいる。広島トヨペットでは2018年9月、ショールームの営業時間を10時~18時に変更した。業界全体で労働環境の改善が進み、営業担当者の健康維持や持続可能な職場環境の構築に寄与している。
さらに顧客側の意識変化も大きい。特に若年層では、自宅への訪問を嫌がる傾向が強まっている。このような社会環境の変化が、訪問営業から店舗中心の営業スタイルへの転換を促す原動力となった。飛び込み営業の時代は、単なる営業手法の歴史ではなく、地域経済や人的資本、社会的価値観の変化と密接に結びついた時代であったと言える。