「Suica帝国」に宣戦布告? 首都圏11社「クレカ相互利用」連合、今後どうなる? 背後で支える技術力の正体
大きく外れた筆者の予想

複数の路線や駅をまたぐタッチ決済乗車には、様々な課題が存在した。まずはクレジットカード発行ブランド間の利害調整である。さらに、運賃計算システムの開発と統合も大きなハードルとなる。特に後者は複雑かつ重要であり、後ほど詳しく解説する。
東急グループのプレスリリースによると、この大連合によるタッチ決済乗車の相互利用は2026年春以降に開始される予定だ。東京メトロでは、タッチ決済乗車の全線適用開始と同時に相互利用も可能となる。これにより利用者の利便性は大きく向上する見込みである。
例えば、都心を走るC線は、私鉄A社とB社が事実上共同管理している。このC線を走るA社の車両で、B社管理のD駅まで直接移動できる。しかし相互利用が導入されていなければ、A社管理の駅からD駅までクレジットカードでシームレスに移動することはできない。この課題を解消するには、複数の鉄道事業者、カード発行会社、決済システム開発者が参加する広域的な協議が不可欠となる。8月20日に配信した記事のなかで、筆者はこう書いた。
「JR東日本は2024年からの10年間で、Suicaのセンターサーバー化にともなう新機能や新サービス展開を計画・公表している。この10年は長いように見える。しかし、首都圏私鉄各社のためにクレカブランドが連携して相互互換性を確保する時間よりも短い可能性もある。クレジットカードはブランド運営会社、決済システム運営会社、そして事業者と登場キャラクターが多いため、新サービスのローンチにはさらに時間がかかるリスクがある」
結果として、この予想は大きく外れた。クレジットカードのタッチ決済乗車に関わるシステム開発の動きは非常に速く、年度単位の計画でしか動けないという日本企業のイメージを払拭するに十分なインパクトを持っている。
では、この大連合の立役者は誰か。首都圏に限らず、日本全国の鉄道や路線バスにクレジットカードのタッチ決済乗車システムを導入した中心的存在といえば、三井住友カードである。同社の提供するタッチ決済ソリューション「stera transit」は、多くの利用者に
「クレジットカードでも交通系ICカードと同じように使える」
という認識を広めた。今回の首都圏鉄道11社による大連合にも、同社が参画している。しかし、ここではOSSに注目したい。