「グリーン車なのにギャン泣き」 芸能人投稿が新幹線「赤ちゃん泣き声問題」に――プレミア車両で「静寂」は絶対か
「静寂の権利」と「移動の権利」の衝突

グリーン料金には、静かに過ごすためのコストは含まれているが、子ども連れへの配慮は十分ではない。そのため、静かに過ごす権利と移動する権利がぶつかることがある。どちらの権利もはっきりと設計されていないので、利用者同士で摩擦が起きやすい。一部の母親は、
「グリーン車を避ける」
ことで自分を抑えている。しかしこれは、実際には移動の選択肢を狭めることになり、
・子育て世帯の移動の機会
・地域経済の流れ
にも影響する可能性がある。問題は、制度が共存を前提にしていない点にある。
制度を改善する方法として、まず車内の空間を見直すことが必要だ。改造でできた余ったスペースを、授乳やあやし用の専用エリアとして使うことが考えられる。吸音材や防音スクリーンを使えば、泣き声の広がりを抑え、周りへの影響を減らせる。
次に、情報の工夫も大事だ。航空会社では予約画面に幼児座席マークを出し、利用者が事前に知ることができる仕組みがある。鉄道でも同じ表示をすれば、泣き声を避けたい人と安心して使いたい人の両方に配慮できる。事前に情報が分かると、心理的な負担も減る。
さらに、料金の仕組みを見直すこともできる。子ども連れ専用の区画を「ファミリーグリーン」として有料にすれば、快適さと心の余裕を確保できる。専用区画を「保護する場所」ではなく「選べる選択肢」として提示すれば、利用者のさまざまなニーズに応えられ、鉄道会社の収益にも役立つ。
加えて、車内サポート員を配置することも有効だ。ベビーカーの移動や授乳を手伝う専門スタッフを、自治体と鉄道会社が協力して育てれば、家族の移動も安心になる。
制度、空間、情報、料金、そしてサポートをまとめて工夫することで、静かに過ごす権利と移動する権利を両立させられる。ルールを守らせるだけでなく、利用者全体の便利さを高める仕組みづくりが求められている。